鉄筋コンクリート造の橋梁では,排水不良等が原因で部材へ局所的に水が供給される場合があり,水掛かり部周辺における集中的な劣化が問題となっている.本研究課題では,水掛かりを受けるコンクリート構造物の劣化機構の理解と維持管理への提案に資する情報の取得を目的に,水掛り部を模擬した供試体を作製し,埋設電極を用いたコンクリート比抵抗の計測により,コンクリート内部の水分移動特性の把握を行った.また,RC梁供試体を用いた実環境暴露により水掛かりが内部鉄筋に及ぼす影響についても併せて検討した. 本研究課題で得られた成果を以下にまとめる. ① 水掛かりに伴うコンクリート内部での水分移動特性:チタン電極をコンクリート中に埋設することで,電極間の電気抵抗から内部相対湿度を評価することが可能となった./水掛かりによる吸水,乾湿繰り返しにおいて,水分は広範囲に浸透せず,水掛かり部近傍の狭い範囲で浸透していることが確認された./また水掛かり部では,狭い範囲にて湿潤部と乾燥部が混在する環境が形成さて,鉄筋が埋設されていることを想定した場合,これに起因したマクロセル腐食の発生が懸念される.
② 水掛かりが鉄筋腐食に及ぼす影響:水掛かり部において自然電位の低下が確認された. /水分供給の有無で腐食に差が生じることが確認された./また,部材全面に水分が供給される環境と局所的な水掛かりによる水分供給を受ける環境を比較すると,両者の腐食速度は概ね一定になり,同程度の腐食が生じることが明らかとなった.
|