研究課題/領域番号 |
21K14233
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高井 俊和 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (00759433)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高力ボルト継手 / 終局挙動 / 最大荷重 / エネルギー吸収 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,高力ボルト継手の終局挙動の評価に関する基礎的な検討として,(1)終局挙動を評価するためのFEM解析の方法の確認と,(2)継手部のエネルギー吸収特性の確認を行った.(1)の検討では,既往の研究の論文で示されている高力ボルト継手の引張載荷実験の再現FEM解析を実施し,実験結果とおおむね整合した良好な結果が得られた.継手の終局モードとして,一般に,母材の純断面引張,縁端部のせん断,ボルト軸部のせん断の3モードが挙げられ,これらの3つのモードがそれぞれ得られた実験の再現解析を実施した.既往のFEM解析の方法では荷重のピーク値やピーク時の変位が大きめになるなど,荷重-伸び関係の整合性に課題があったが,材料特性に破断ひずみを追加するなどモデル化の変更によって,荷重-伸び関係の整合性が向上することを確認した.(2)の検討では,(1)のモデル化方法を用いてパラメトリック解析を実施した.3つの終局モードが生じるように解析対象の継手の寸法諸元を調整して解析を実施した.その結果,純断面引張モードはエネルギー吸収量が多く,対して,縁端せん断モードとボルト軸部のせん断モードのエネルギー吸収量は少なくなった.その要因として,後の2つのモードは純断面引張モードよりもピーク荷重が高い場合でも,ピーク荷重時の継手伸びが小さいため,結果的にエネルギー吸収量が少なくなることが分かった.また,各モード別に母板,連結板,ボルトの各部材のエネルギー吸収量の内訳を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で項目を示した(1)終局挙動を評価するためのFEM解析の方法の確認では,継手の引張実験の再現解析で,解析モデル方法の変更により荷重-伸び関係,荷重ピークの実験との整合性が確保された.(2)継手部のエネルギー吸収特性の確認では,パラメトリック解析を実施して継手の終局モード別に基本的なエネルギー吸収特性を整理することができた.いずれの検討とも順調に進行し,当初予定していた目標程度まで進めることができ,次年度の検討にあたって特段の不都合が生じていないため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,(3)エネルギー吸収の点で有利となる継手の寸法等の条件を検討し,(4)力学実験によりその挙動を確認する.(3)の検討では,前年度の(2)の検討で3つのモード別にエネルギー吸収特性の基本的な傾向は整理したが,検討ケースが限られているため,ピーク荷重,伸び,およびエネルギー吸収の点で有利となる設計条件を整理する.また,3つのモードのいずれかが卓越する場合は検討したが,複数のモードが連成する場合も検討ケースに加える.(4)の検討では,(3)で特徴的な傾向が得られた諸元の継手を対象として,力学実験により挙動を確認する.得られた実験結果をもとに,必要に応じてFEM解析の精度向上を検討する.また,前年度は基礎的な挙動を確認するため,継手を対象に検討したが,当て板補修部を想定したケースも追加して検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,構造解析用計算機が当初予定していたよりも低廉で取得できたこと,研究情報の収集を予定していた学会研究発表会がオンラインで開催され,計上していた国内旅費が不要となったためである.そのため,検討は当初の予定に沿って進捗したが,次年度使用額が生じた.その使用計画として,次年度には力学実験や研究成果の発表活動などを予定しており,さらに研究が伸展,充実するようこれらの活動に有効活用する予定である.
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