この研究では,橋梁の壁高欄に軽量で高耐食性のFRP(繊維強化プラスチック)を適用することで,施工性の向上とメンテナンス負荷の低減を目指し,LCCに有利な設計方法の確立を図る.主な研究課題は,異種材料を用いた接合部の力学的挙動,曲げ鋼部材の力学的挙動の解明,材料物性値のばらつきと壁高欄システム全体の挙動の把握,および長期使用によるリラクセーション特性の評価である. 具体的には,高力ボルトを使用したGFRP継手の摩擦接合に着目し,異なる表面処理を施した継手の引張実験を行った.その結果,亜鉛めっき後にりん酸塩処理を施した連結板と,耐候性を向上させるフッ素樹脂塗装を施したGFRP部材の組み合わせが最も高いすべり耐力を示すことがわかった.また,実験から得られたデータを基に再現解析を行い,ボルト周辺の継手の変形が載荷中のボルト軸力の増加に影響を及ぼすことを明らかにした.FRPの材料特性のばらつきを考慮したシミュレーションでは,せん断弾性係数の影響がすべり発生までの挙動に最も大きく影響することを示した. さらに,長期リラクセーション特性に関する検討では,異なる製造ロットや表面処理,導入ボルト軸力による違いがボルト軸力低下に及ぼす影響が小さいことを実験的に確認し,約2年間でボルト軸力が20%低下することを明らかにした.これに基づき,橋梁付属物の供用期間30年間における軸力低下の予測式を提案した. 壁高欄基部の継手構造については,L型鋼部材の耐荷力評価と,長孔内ボルト配置の継手性能をFE解析で検討し,L型の曲げ加工半径が耐荷力に及ぼす影響は小さいことを示した.実物大のGFRP壁高欄に対する曲げ載荷実験を実施し,摩擦接合継手の曲げ挙動と基部構造の力学的挙動を明らかにし,合理的な設計時の抵抗力の分布を提案した.
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