本研究の目的は,実験的検討と数値解析的検討により斜面崩壊土砂の堆積ダイナミクスを明らかとし,崩壊土砂の到達範囲・衝撃力の新しい評価手法を検討,提案することである。 2022年度の研究実施計画は,実験的検討として,土砂流下模型実験で堆積ダイナミクスの定性的傾向を明らかにし,それら流動現象を表現するDEMモデリング手法を構築すること,数値解析的検討として,上記モデリング手法を用いた数値実験により堆積ダイナミクスを解明すること,上記結果に基づき崩壊土砂の到達範囲や待受け構造物に作用する衝撃力に関する新しい評価方法を検討することである。数値解析にDEMを用いることで,低拘束圧下で大変形・破壊・衝撃等を伴う離散的な土砂流下現象を粒子レベル,粒子骨格レベル,崩壊土砂全体レベルまでマルチなスケールで現象を観察できるため,斜面崩壊土砂の堆積ダイナミクスの理解を促進することが期待できる。 実験では,粒径、崩落質量、斜面勾配、流下高さを網羅的に変化させた土砂流下模型実験を計画どおり実施し、各種パラメータが到達距離に及ぼす影響を明らかにした。 数値解析では,マルチスケールな視点から、流れの安定性に関するSavage Number、粒子のランダム性に関するGranular temperature、応力分布、間隙比に関連する指標を分析し、各種パラメータと到達距離との関係を土砂内部の応力伝播・流況特性の観点から解釈した。 到達範囲評価の高度化に向けて斜面法尻からの平坦部での流動層厚のパラメータが重要である可能性を示し、衝撃力評価の高度化に向けて待受け対策工に作用する崩土衝撃力の発生領域が斜面上流方向の広範囲に分布していることを明らかにし、これらの知見により到達範囲・衝撃力評価を高度化できる可能性を示した。
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