研究課題/領域番号 |
21K14240
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
澤田 茉伊 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50781077)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不飽和土 / 低拘束圧 / 引張試験 / 水分・熱移動 / 蒸発 / 高ポテンシャル / 遺構の展示 / 文化財の保全と活用 |
研究実績の概要 |
表層の崩壊,侵食を防止し,また地表が文化的価値を有する遺構を保全する上で表層の力学の理解は不可欠である。しかし,低拘束圧下,特に不飽和で考慮が必要な引張領域の試験は難しく,評価手法が確立されていない。本研究は,締固め土の低圧下の力学特性を解明し,表層の乾湿に伴う変形評価を可能にすることを目的とする。そして,本評価手法の実践として,乾湿による損傷が著しい地盤遺構の水分制御に応用する。具体的には,(研究1)低圧試験法の構築と乾燥過程・再湿潤時の力学特性の評価,(研究2)表層の変形解析法の開発と検証,(研究3)表層の力学評価に基づく遺構の水分制御方法の提案,に取り組む。 R4年度においては,研究1については,研究代表者の異動に伴う実験装置のセットアップ等に時間を要したため,試験法の開発が遅れている。研究2は,令和3年度に開発した水分と熱の同時移動を考慮した一次元の解析プログラムにおいて,FDM解析の離散化部分の修正を行い,また蒸発と降雨浸透の両方を考慮できる境界条件の設定を可能にした。さらに,解析の妥当性検証に必要な土柱の蒸発実験のデータを充実させた。研究3については,研究2の解析プログラムを用いて,遺構を室内で展示した場合の乾燥の進行を評価し,湿度調整と定期的な散水による乾燥抑制効果を検証した。解析の結果,室内での乾燥は著しく,これらの対策法だけでは屋外と同等の水分環境を保つことが困難であることがわかった。研究3については,屋外展示における降雨の浸透抑制法として有効であるキャピラリーバリアについて,降雨実験を行い,バリアのブレークスルーが生じる条件を考察した。既往研究では,粗粒土の水浸入値がブレークスルーを支配しているとされてきたが,粗粒土の間隙径が特に粗大な場合は細粒土の毛管力が支配することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が令和4年4月に京都大学から東京工業大学に異動し,研究環境が変化したことに伴い,当初の計画よりもやや遅れている。具体的には,実験装置の移動とセットアップに時間を要したこと,また講義や研究室運営のためにこれまでよりも時間が必要になったことが挙げられる。次年度以降,新しい研究環境のもとで,当初目標を達成できるように計画を再考する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は長期の在外研究のため,研究1の低圧試験の開発を進めることが困難であるため,研究期間の延長を検討している。研究2については,表層の大気-地盤の水分移動と安定性の問題に数値解析で取り組んでいる海外の研究者と情報交換を行う。特に,地盤の蒸発のモデル化について議論を行う予定である。研究3については,大気の温湿度環境の制御や散水だけでは,遺構の乾燥抑制効果は十分でないことが明らかになったため,遺構表面を地盤材料で被覆する対策案を研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間が単年度である他の外部資金から、本研究課題と共通して使用できる物品購入費を支出したため、次年度使用額が生じた。 次年度については、英国で在外研究中のため、実験装置の改造等は控えるが、欧州への移動が容易である点を活かし、国際会議での本研究成果を発表し、さらに今後の研究の国際化を図るため、海外研究者とのネットワーク構築のための旅費を支出予定である。具体的には、不飽和土の国際会議であるUNSAT(ギリシャ)で発表予定である。
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