初年度では,過去の被害事例から,被害程度の大きかった液状化の恐れのある基礎地盤に建設されたカルバートをモデル化した遠心模型実験を実施した.その結果,カルバート直下の基礎地盤において,連結部と坑口部直下の過剰間隙水圧比の応答が大きく異なり,連結部直下における液状化がより著しく進行した. 次年度では,再現性確認の実験,粘土地盤上の実験,並びに数値解析による分析を進めた.弾塑性有限要素法による二次元動的解析を実施した結果,数値解析においても,カルバート連結部直下の基礎地盤で初期有効応力に対する減少比が最大化し,坑口に向かって減少する傾向が確認された. 最終年度では,実問題の解決に向けて,解析条件を一般化させ,液状化層厚,カルバートの排水境界ユニット数の影響を調べた.くわえて,周辺地盤との一体性に直接関わるカルバート・地盤の応力の伝達状態を計測的に解明することを目的に,三軸力覚センサによる要素実験を実施した.液状化層厚が3.0 m と10.0 m のケースにおいて,実物と同様にカルバート直下が遮水壁として働く場合,前者は坑口に向かって目開きする(凸型)変形モードに,後者は中央部の沈下が最も大きくなる(凹型)変形モードを示した.まず,液状化層厚によらず,カルバート直下の基礎地盤において坑口側でせん断ひずみが大きく残留した.一方で,深さ方向の初期有効応力に対する減少比の分布を確認すると,液状化層厚が深いケースでより広範な液状化を示していた.すなわち,基礎地盤に生じるせん断ひずみの分布傾向は,液状化層厚によらず共通することから,カルバートの沈下を許容するだけの液状化層厚がある場合にカルバートは凹型の変形モードになる.基礎地盤が液状化の恐れのある地盤の場合,カルバートと周辺地盤の追随性は基礎地盤の許容変形量に依存して,カルバートと周辺地盤の地震時追随性が決まると考えられる.
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