研究課題/領域番号 |
21K14242
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
梶山 慎太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50803532)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鉄筋挿入工法 / 個別要素法 |
研究実績の概要 |
本年度は,実験装置の作製,載荷実験を行った.個別要素法は実験に合わせて各パラメータを調整中である. 開発した静的載荷式鉄筋挿入工模型実験はアクリル板をアルミフレームで囲われている.載荷は,5cm×15cmの載荷板を,空気圧によって荷重制御し,のり肩に荷重を与える.与えた荷重および載荷板の変位量は,荷重計および変位計によって100ms ごとに自動計測した.側面には web カメラを設置しており,各載荷段階で模型盛土の様子を撮影した. 補強材の挿入は,実際の施工方法に近づけるために,補助器具を用いて以下の手順で挿入した.補助器具は2.8cm 間隔で千鳥配置に直径 6mm の穴が開けられている.補強材はこれらの穴の位置に設置する.補強材は木工ドリルに直径 6mm のプラスチックのストローを装着して模型盛土に突刺し,木工ドリルのみを引抜いて削孔して補強材を挿入する.なお,この補助器具を用いた補強材の挿入角度は,既往研究結果を踏まえて水平から下向きに 60°とし,補強材には,既往研究で使用した直径 1.4mm,長さ 8cm のステンレス製針金のに,7cm だけ砂を接着して作製した.珪砂を接着した補強材の直径は 2.29mm(以下,細)と 3.64mm(以下,太)の 2 種類用いた.また,比較のため,補強材を使用しない実験も実施した.得られた知見を示す. 補強材を用いた実験同士を比較すると,補強材の直径が大きい方が破壊載荷力が大きく,補強材(太)では無補強と同程度の破壊載荷力となった.無補強の場合は脆性的に破壊しているのに対して,補強材がある場合は直径の大きさに関わらず延性的に破壊することが明らかとなった.沈下量が載荷板の 1 割の時の載荷応力を比較すると,無補強に比べて削孔のみと補強材(細)は 1 割低く,補強材(太)は 2 割高くなることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の方法や測定,撮影方法はおおむね確立しており,載荷実験も数種類の実験を複数回行っており,データが蓄積されている.個別要素法についても,モデルを作製中である.一方,本年度の研究で既往研究とは異なる方法で補強材を挿入したところ,同じ径の補強材による既往研究の補強効果よりも補強効果が小さいことが明らかとなった.補強効果は補強材の径を大きくすることで改善が認められたことから,削孔径に対して補強材の径が小さすぎる,換言すると補強材の定着具合が補強効果に大きく寄与する可能性を示唆した.このことから,新たに補強材の挿入(定着)のさせ方についても考慮する必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の展望としては,補強材を模型盛土に挿入する方法を改良し,補強材が十分に定着した状態でその補強効果を検討する.また,本年度ではすべり面が明確に見られなかったため,模型盛土密度の変更,あるいは湿潤状態の模型盛土を用いてすべり面を明確に観察できる模型盛土を作製し,鉄筋挿入工がすべり面に与える影響を検討する. 併せて,個別要素法のフィッティングを行う.また,十分に補強材を定着させる方法が確立次第,引抜実験を行い,引抜実験の実験方法を確立させる.
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