研究課題/領域番号 |
21K14243
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小野 耕平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (30804166)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 斜面崩壊 / 不飽和土 / 遠心模型実験 / 豪雨 / 防災 |
研究実績の概要 |
研究初年度は,地盤表層への雨水の浸透挙動を実験的に把握すること,および地盤の状態と降雨の条件が浸透挙動に与える影響を定量化することを目的に,均一な水平地盤に対して雨水の鉛直浸透実験を遠心力場で実施した。 遠心力場で降雨を再現する場合,微小な雨滴径で高強度の散水を行う必要があるため,スプレーノズルを用いて微小な霧状の散水を行った。圧縮空気と加圧水をノズルに供給することで散水し,経路内に設置したバルブの開閉で散水の開始・停止を遠隔操作した。小型土槽内に初期含水比15%の砂を相対密度80%となるように締め固め,高さ8cmの均一な水平地盤を作製した。地盤材料には東北硅砂8号を使用し,ファインサンドを混合することで透水係数を調整した。地盤への雨水の鉛直浸透挙動を把握するため,サクションを計測可能な先端がセラミックディスクタイプの間隙水圧計を2cm間隔で深さ方向に,土壌水分計を中心深さに設置した。降雨強度,地盤の透水性,遠心加速度を変化させた計7通りの実験を実施した。 得られた主な結果は以下の通りである。①深さ方向に連続的に配置した間隙水圧計により,雨水が地表面から浸透する様子を精度良く計測できた。②いずれの降雨条件,いずれの地盤深さにおいても,地盤内の水分量が増加した後に一時的に一定値を保つ状態(疑似飽和状態)が確認された。③疑似飽和状態におけるサクションは飽和透水係数と降雨強度の比に比例し,地盤深さにはあまり依存しないことがわかった。④雨水の浸透速度は地盤の透水係数よりも降雨強度に大きく依存することがわかった。⑤粘性流体の地盤への浸透挙動は,透水係数が等しく調整した地盤と大きく変わらないことがわかった。 これらの研究結果は,国際会議および国内学会の研究発表会に投稿された他,主要な学会誌へも掲載され,その成果が国内外に広く公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,主に水平地盤に対する雨水の鉛直浸透実験を遠心力場で実施した。遠心加速度の影響も含めた雨水浸透挙動の基本的な特性の理解が進むこととなり,次年度に実施する遠心力場での斜面安定実験にもスムーズに着手できる準備が整った。2次元浸透流解析による再現解析の実施にはやや遅れが出ているため,次年度も引き続き実施を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,遠心載荷装置を用いて斜面安定実験を実施する。初年度の鉛直浸透実験の結果を踏まえ,実験ケースを決定する予定である。斜面安定実験では,斜面内の2次元的な水分状態の変化を間隙水圧の計測により把握し,斜面の変形挙動と定量的に関連付けることを目指す。得られた実験データを基に,豪雨時の斜面崩壊の発生と規模を評価する指標の提案に取り組む。
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