気候変動に伴い様々な自然災害が激甚化し、洪水や土砂災害による被害が近年世界各地で発生している。土砂動態は土地被覆や地形などの地域特性に大きく影響されるものであり、世界各地の土砂の時空間変動に関する理解は観測データの不足などにより不十分な状況にある。本研究では、これまで世界各地で収集されてきた現地観測データの整理や数値モデルの改良を通じて広域土砂動態メカニズムの解明を目的としている。 前年度まではこれまで開発してきた全球土砂動態モデルを様々な実験設定において使用しやすくなるよう改良を行った。異なる解像度を使用する際には境界条件の作成に多大な労力を要することが多いため、境界条件データの作成を自動化した。さらに、世界中の研究機関で使用されている河川氾濫モデルCaMa-Floodに土砂動態モデルを正式に導入し、計算資源の節約のために土砂の計算の時間間隔の調整を可能とした。 現地観測データの整理に関しては、多数の研究で引用されているMilliman and Farnsworth (2011)のデータベースに含まれている論文の情報収集を行った。約千件の論文を対象に入手可能なデータの整理を行い、海洋への土砂輸送において大きな割合を占めるアジア・オセアニア地域を中心に精査した。今年度は収集したデータの精査を進め、全球合計値を求める際の外挿の元となるデータの整合性を精査した。元の論文にも詳細な観測の条件等が記載されていない場合が多く、まとめて外挿値の計算に使用するには不適切なものもあるため、さらなる検討が必要である。
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