研究課題/領域番号 |
21K14254
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
白水 元 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (60808210)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | tidal flat / groundwater / morphology / field survey / simulation model |
研究実績の概要 |
仮想基準点方式GNSS測位と無人自動空撮システムによる連続画像から面的な干潟形態の把握を実施した.2021年度中に実施した観測の結果と,その以前から蓄積していた観測データについて,購入した部品で構成した計算機を用いて,フォトグラメトリにより地形の形状復元を実施し,現地のGNSS測位データによるジオリファレンス処理を実施した.これにより定量的な月ごとの干潟面の変化を捉えることができた.対象地の椹野川南潟の岸沖200 mの範囲は,特に夏季中の変動が著しく,冬季は変動が少ない傾向にあることが示された.地域の気象状況を鑑みると南向きの湾口となる山口湾では冬季はむしろ比較的静穏な環境になることもあり,また,降雨による大規模な出水も少ないことが考えられ,こうした土砂の流入流出の安定した環境による影響と考えられる. 購入した複数のテンシオメータで構成する干潟地下水の連続観測について,設置手法や最適な測定間隔を検討する目的で,実地試験運用を複数回実施した.センサー受感部の順応には2時間程度は記録開始前から助走期間が必要となり,今後実施する地下水観測の計画に反映させる. 干潟の底質性状変化を取り込んだシミュレーションの基盤となるFVCOMモデルを構築し,水路データを基に苅田港の水位・波浪データを利用した検証ができるよう周防灘のモデリングを実施した.FVCOMは波浪に関してSWAVEという波浪計算モジュールが存在するが,検証の結果,風速が大きい場合の計算の不安定性が問題となった.そのため,FVCOMを全体のベースとしつつ,今後は多くの研究・実務で利用実績があり,また非構造格子にも対応した拡張がなされている波浪推算モデルSWANを波浪計算として導入したシミュレーションモデル体系の開発に取り組む.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度内の流況観測用機器リースの目途が立たず,流況観測の時期を変更する必要があった.一方で,データ解析環境及び計算環境は整備され,シミュレーションモデルの基礎的な構築は順調に進んでいる.また,干潟地形変化の履歴の蓄積は問題なく継続しており,干潟の干出時の地下水分布の把握については測定装置の特性を考慮して検討した調査の手順を検討し,2022年度の調査から本格的な調査が行える状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
所属機関の移動に伴い,現地観測の機会は制限されるものの,2022年度以降は夏季・秋季に集中して年4回の現地観測の行程を組み対応,冬季についても年2回現地調査の機会を設ける.2022年度の夏季の調査では,1か月程度の流況観測機器設置を目指し,山口湾の属する周防灘海域で波浪調査が行われている苅田港の水位.波浪データと合わせて,シミュレーションモデルの流況・波浪部の検証データに供する.シミュレーションモデルはFVCOMをベースとした海域から湾内の潮流・波浪の計算を実施し,そこで求めた外力の条件をXBEACHモデルに受け渡し局地的な地形変化を計算する.この同時に地下水流動について解くRichards方程式で地下水位変動の履歴を把握し,XBEACHモデルでの土砂移動計算に反映させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更に伴い,これまでのデータ解析に用いていたソフトウェアのライセンスを再取得する必要が生じる.また,2021年度中は,調査に用いる無人航空機は旧所属機関から借りていたが,この度新たに購入する予定である.
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