研究課題/領域番号 |
21K14276
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竇 毅 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 特任助教 (10851107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 都市更新 / ゼロエネルギー / ライフサイクルデザイン / 技術評価 / コンパクトシティー / 脱炭素社会 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究では主に二つの成果が挙げられる。一つは、ライフサイクルアセスメントの視点から、日本における住民の居住形態、居住生活と日常の交通活動による直接的なエネルギー消費量に、住宅及び導入されたエネルギー供給と蓄電システムの内包的エネルギー消費量を加算し、2050年まで脱炭素社会を実現するとすれば、エネルギー供給はすべて再生可能エネルギーから賄う場合に関与している物質総量を評価するツールを開発した。試算した結果、1人当たりのエネルギー消費量と関与物質量では、居住生活と交通活動を支える部分では集合住宅に住んでいる方が戸建住宅より低下する傾向だが、住宅の建設更新廃棄に伴う内包エネルギーを考慮したら、集合住宅は鉄筋コンクリートを多く使用しているため、エネルギーと物質占有量が戸建住宅の方より上がる。だが、最後にエネルギー設備の内包的エネルギーと物質占有量を加算すれば、集合住宅の方が総じて省エネ・省関与物質につながることが分かった。 もう一つの成果は前述した内容にも関連している。それは、将来のエネルギー供給システムに大量導入される太陽光パネルとリチウムイオン電池に対し、高度解体技術の導入を想定した理想的なリサイクルシステムでは、総じて炭素排出量と関与物質量の削減への効果をプロスペクティブライフサイクルアセスメントで把握できた。結果では、脱炭素社会目標の実現を念頭に、高度なリサイクルシステムの導入が全体的にエネルギー消費量と物質消費量の削減に大きく寄与されることが明らかにした。ただし、その削減効果は資源管理と環境政策に大きく影響されている。これらの結果をさらに都市計画に紐づけ、脱炭素社会と省エネ・省資源社会を両立できるように考慮が必要な要素を整理し、最適な政策パッケージの提案につながることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度ではコロナ禍の影響が続いていたが、研究交流の回復により学術活動が前年度より活発してきた。その結果、本研究課題では全体的に進捗が予想の通りに進んでおり、一部の成果はすでに論文化できるようになっている。一方、世界的に、カーボンニュートラル社会の実現に向けた行動計画は各分野で公表され、従来より野心的な政策が相次いで講じられた。建築とエネルギー分野の政策では、依然として疑問点が多いけれども、本研究のシナリオ分析には考慮しなくては行かない。また、時効性と新規性を重視する学術研究としては、やむを得ずに計算条件を修正することもあった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究成果を受け、今年度はシミュレーションと評価モデルを統合する方へ進むことを予定している。まずは、ライフサイクルアセスメントの視点から、内包エネルギーを考慮した総エネルギー消費量を都市計画に紐づけ、実在する都市・北九州市のケーススタディーで、エネルギー消費量を最大限に削減する政策パッケージの選出とその削減効果を量的に把握する。その上で、脱炭素社会の実現に向けて必要とされている、特に内包エネルギー消費量が無視できないエネルギー供給設備に対し、高度なリサイクル技術を導入したシステムを設計し、建築部門の内包エネルギーを最大限に削減する同時に、地域的資源循環によって資源投入量を最小限にするような政策提案とその効果の定量分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度では当初、北九州市の対象エリアにおいて構造物分布のGISデータを購入する予定であったが、このデータの金額が想定額を大きく上回っている。ほかに、欧州のオーストリアで開催されたISIE国際学会への旅費と参加費は、世界的なインフレーションとウクライナ戦争の影響で想定より高まったため、当年度資金の使用計画のバランスが崩れ、使用計画を見直す必要が発生した。残った基金は、2023年度に交付される資金と加わり、新年度に回してもっと効率的に使用されると考えられる。
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