研究課題
本研究は、福島原発事故由来の放射性物質に汚染された牧草等のバイオマスから、非焼却・非拡散での減量・安定化の処理を行う技術として、嫌気性微生物を利用したバイオマス減量化かつバイオリーチングのシステムを高度化することを目的としている。本年度は、嫌気性処理プロセスを汚染バイオマス(牧草)の処理システムとして適用され、水、固形性成分及び放射性セシウムの挙動を、物質収支を含めて定量的に把握し、生牧草における放射性セシウムの液相・土壌分画を解明した。R3年度に嫌気性連続槽型リアクター(CSTR)三基をスタートアップし、それぞれ粉砕牧草、アルカリ前処理および超音波前処理した牧草を基質として投入した。連続嫌気性処理を行った(それぞれR1, R2とR3とする)結果、アルカリ前処理を施された牧草はより高い生分解性を有することを示唆した。三種類の嫌気性処理液はクロロホルム溶媒で有機性成分を抽出し、GC/MSを用いた測定した結果、アルカリ前処理により植物細胞壁を構成するリグニンの一部がバニリン、シリンガアルデヒド、3-メトキシ-4-ヒドロキシベンゼンアクリル酸などの生分解性物質まで分解された。これは、アルカリ前処理は嫌気性処理性能に促進作用を有した原因の一つであると考える。アルカリ前処理牧草を処理するCSTRにおけるRad-Csの溶出率が最も高かった(5.77±1.96%)が、全体としては三基のCSTRにおいてもRad-Csの溶出率が低く、10%未満であった。牧草試料(生牧草)には相当量の土壌が混入しており、乾物ベースで試料中に9.51wt%TSに相当する土壌が付着していたことがわかった。土壌のRad-Cs濃度は2438Bq/kgであったが、植物体におけるRad-Cs濃度は48 Bq/kgしかなかった。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Water Research
巻: 225 ページ: 119194
10.1016/j.watres.2022.119194