研究課題/領域番号 |
21K14292
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
永井 拓生 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (60434297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Bamboo / Round bamboo / Moisture content ratio / Bending / Brazier effect / Bamboo building / Durability / Aged deterioration |
研究実績の概要 |
竹の物性に関する工学的評価,さらには建築利用を促進するためには,物性に影響する様々なパラメータ(種別,伐採時期,含水率等の物理的性質)を整理し,各パラメータと物性との関係を入念に明らかにする必要がある。本年度は以下の項目を実施した。 (1)丸竹の曲げ特性・・・丸竹が曲げを受ける場合にもBrazier効果は生じるが,竹稈に局部座屈が生じることはほとんどなく,稈壁の割裂破壊が先行する場合が多い。これは,竹の特徴である「節」によって局部座屈が抑制されるか,もしくは竹稈の円周方向の破壊が先行するためである。本年度は,Brazier効果に関する先行研究をもとに定式化を行い,実験との比較を通じ,丸竹の曲げ破壊メカニズムおよび曲げ強度の推定について考察した。 (2)竹の含水率測定・・・ISO22157では力学試験を行った試料について実験の度に含水率の測定を行うこととしているが,測定の一度の試行に少なくとも26時間以上を要することになる。したがって,多くの力学試験を行うためには,含水率の測定に多大な時間が割かれることになる。そこで,本研究では,高温(130~200℃)で加熱し,短時間でISOの方法と同等の精度で含水率を推定する方法について検討した。 (3)竹建築事例の調査と分類・・・調査対象は,2011~2015年に出版された竹建築に関する文献5件から収集した126事例とした。文献に記載の情報に加え,各々の建築事例に対し,ウェブサイトで収集可能な情報も集めた。事例の概要(建築年・用途・所在地等)に加え,竹材の種類・処理方法,構法,接合部の構成,などの情報を整理した。なお,竹材の処理方法については収集できた情報が少なかったため,追加で竹材を専門に扱う業者・設計者のウェブサイトも調べ,処理方法について記載のある竹材業者7社および設計者2組の情報を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は5か年に亘り竹の物性とその経年変化が力学的特性に及ぼす影響を調査する研究であり,初年度にあたる本年度は実験等を行うための予備研究期間と位置づけている。本年度は,竹を保管するための保管設備の設置や曲げ実験等力学試験を行うための基礎的な方法を確立することができ,当初の計画通り,順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
・2022年度の研究計画 丸竹の伐採時期と乾燥期間と力学的特性の関係を調査する。具体的には、年間8-12回に亘り同程度の日数間隔で竹を採取し、含水率が平衡状態となる自然乾燥期間、その期間経過後の含水率と力学的特性を実験により確認する。また、複数の保全処理を施した丸竹のサンプル作成を行い、次年度以降の経年変化観察と力学的特性の検証実験に向け準備を行う。 ・2023年度以降の研究計画 丸竹の伐採後保管期間と力学的特性の関係について、定期的に実験を通じ経時変化をモニタリングする。また、保全処理した竹についても同様に定期的に試験片を抽出し、力学的特性を実験により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、屋外調査および研究協力者との共同活動に一部制限を受けた。また、同様の理由で屋外での重機を用いた資材調達、実験等を実施することができなかったため、研究計画のマイナーチェンジを行い、主として室内実験を中心に行った。次年度以降、新型コロナウィルス関連の状況を慎重に考慮しつつ、屋外調査等を行っていきたいと考える。
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