研究課題
竹の物性に関する工学的評価,さらには建築利用を促進するためには,物性に影響する様々なパラメータ(種別,伐採時期,含水率等の物理的性質)を整理し,各パラメータと物性との関係を入念に明らかにする必要がある。本年度は以下の項目を実施した。(1)丸竹の曲げ特性・・・丸竹が曲げを受ける場合にもBrazier効果は生じるが,竹稈に局部座屈が生じることはほとんどなく,稈壁の割裂破壊が先行する場合が多い。これは,竹の特徴である「節」によって局部座屈が抑制されるか,もしくは竹稈の円周方向の破壊が先行するためである。本年度は,Brazier効果に関する先行研究をもとに定式化を行い,実験との比較を通じ,丸竹の曲げ破壊メカニズムおよび曲げ強度の推定について考察した。丸竹の曲げ破壊モードは,繊維直交方向の物性値から,含水率等によらず推定可能であることを実証した。(2)未乾燥・非保護処理竹を用いた丸竹柱の座屈荷重について検討を行った。竹稈の曲げヤング係数および断面形状を一定の精度で反映したモデル化を行うことにより,線形座屈解析により十分な精度で座屈荷重の推定が可能であることが分かった。(3)竹の保護処理方法について,国内外で用いられている方法・事例を調査し,効果的な方法を選定した。ホウ酸+ホウ砂溶液を用いた方法(Boron solution)を採用し,実際に保護処理を実施した。
2: おおむね順調に進展している
初年度に伐採した竹について,定期的に力学試験を実施し,物性の経時変化を観測してきている。この結果,伐採後2年以内であれば,特に保護処理を行わずとも,適切な環境下にあれば力学的性能に顕著な変化は観察されない。また,力学的性能として,繊維平行方向の圧縮・せん断・曲げの基本的特性に加え,繊維直交方向の特性および竹稈の座屈荷重についても調査を加え,より網羅的な竹稈の力学的特性データベースの構築を進めており,研究は順調に進展していると言える。
これまでに各種の力学的特性の試験方法について確立を行ってきた。今後は,初年度に伐採した竹の定期的な力学的性質の経変変化モニタリング,および保護処理した竹のモニタリングを行う。また,竹稈のクリープ特性についても検討を開始する予定であり,23-25年度の3か年に亘る経年変化を調査する。
研究で実施する物品費の一部を他財源から賄うことができたため。生じた次年度使用額は,本研究で実施予定の実験試料数の拡充等にあて,より充実した実験調査を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Proceedings of the IASS Annual Symposium 2023 Integration of Design and Fabrication 10-14 July 2023, Melbourne, Australia Y.M. Xie, J. Burry, T.U. Lee and J. Ma (eds.)
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