研究課題/領域番号 |
21K14292
|
研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
永井 拓生 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (60434297)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 竹 / 耐久性 / 経年変化 / 保護処理 |
研究実績の概要 |
(1)風乾保管した丸竹の力学的特性の経年変化 曲げヤング係数については、保存期間を経るに連れて、稈直径が小さな領域ではやや増大、稈直径が大きな領域ではやや減少する傾向が見られたが、その程度は小さく、おおむね、2年以内の風乾保存では曲げ剛性に大きな変化はないと考えられる。一方、丸竹柱の座屈耐力は伐採直後と比べ風乾保存した試料では大きく増大する傾向が見られた。また、竹稈の短柱圧縮強度もやはり風乾保存を経て平均値が大きく上昇しており(伐採直後60 MPa → 1年保存80 MPa)、その他の強度も保存期間を経て全般的に増大する傾向が見られた。この理由は主として含水率の低下によるものと思われるが、一方、含水率が5~40%程度の範囲では、含水率による強度の変化はほとんど生じないことも確認できた。 (2)保護処理による竹の物性への影響 保存処理後の試験体(モウソウチク)について、化学的特性として主要構成成分、セルロース結晶化度および糖含有率の測定、ならびに力学的特性の確認を行った。ホウ酸処理は竹材の材質に影響を及ぼさないが、暴露により割れや力学的特性の低下が生じやすかった。油熱処理は高温で処理することで処理後の材質が脆性的になるものの、140℃では処理後の材質の変化が比較的小さかった。割れが生じにくく力学的特性の劣化も小さいため、耐久性に対する効果が最も高い処理方法であった。燻煙処理では、高温での処理のため材質が多少脆性的になるが、耐久性に対する効果がある程度確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に伐採した竹について,昨年度に引き続き定期的に力学試験を実施し,物性の経時変化を観測してきている。この結果,伐採後3年以内であれば,特に保護処理を行わずとも,適切な環境下にあれば力学的性能に顕著な変化は観察されていない。また,基本的な力学的特性値の検証に加え,各種保護処理の処置直後の物性に対する影響について多角的な調査も追加して実施しており,研究は順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに各種の力学的特性の試験方法について確立を行ってきた。引き続き,初年度に伐採した竹の定期的な力学的性質の経変変化モニタリング,および保護処理した竹のモニタリングを行う。保護処理については一般的な方法(ホウ素系化合物の常温水溶液)に加え,高熱処理時の物性に対する影響を調査し,有効な保護処理方法の選定を行う。また,竹の小片部材および竹稈のクリープ特性についても実験の準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本研究計画の一部を学生が自身の卒業研究としても取り組んだため、人件費・謝金を必要としなかったためである。同金額については、初年度に購入した備品のメンテナンス費用として使用する予定である。
|