研究課題/領域番号 |
21K14299
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米村 美紀 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90893727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 純音性騒音 / アセスメント / 騒音評価 / 環境心理 |
研究実績の概要 |
本研究は,純音性成分が含まれる騒音の評価手法を,聴感評価実験のデータに基づいて構築しようとするものである。令和3年度は,複数の純音性成分を含む騒音に関する聴感評価実験を行った。 純音性騒音の過去の検討では,単一の純音性成分を含む音を試験刺激として用いられることが多かったが,実際の純音性騒音は倍音を含むことの方が多い。そこで,本検討では複数の純音性成分を含む音の評価実験を行った。40-400Hzの比較的低い周波数帯域に2つの純音を含む試験音を用いて騒音のわずらわしさを評価させ,純音の強度およびA特性音圧レベルとの関係において整理し,純音性成分が含まれることによるわずらわしさの増加を定量化した。 わずらわしさとA特性音圧レベルの関係については,純音性成分を含む騒音の方が,一般の広帯域騒音よりもわずらわしさが高く,わずらわしさの増分は最大で5dB相当であった。純音性成分の数によって大きく傾向が変わることはなく,既往研究でよく知られている単一純音の場合と同様な傾向であった。純音強度に関しては,国際規格で定められる指標であるTonal Audibility(純音性可聴度)が評価結果(わずらわしさ)の関係を調べた。指標の計算方法が純音周波数に応じて場合分けされていることを要因としたばらつきが一部で見られたものの,全体としてはいずれの周波数でも純音性可聴度がわずらわしさと強い線形性を示す結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・複数の純音性成分を実施し,国内学会で発表し有益なフィードバックを得た。 ・査読論文を1報出版した。査読において,今後の研究計画に反映させるべき指摘やコメントを得ることができた。 ・広帯域に対応した聴感評価実験システムの構築:これまでは400Hz以下の純音性成分を取り扱ってきたが,500Hz以上の帯域に純音性成分を含む音についての実験的検討を行うための準備として,ヘッドホンを用いた実験システムの整備を行った。このシステムを用いた実験は,令和4年度以降に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
高周波数帯域の純音性成分にも対応するために新しく構築した実験システムを用いて,種々の広帯域騒音に40Hzから2000Hzの純音性成分が含まれた音に対する評価実験を実施する。広帯域騒音の周波数特性によって,純音性成分が及ぼす影響に違いがあるかどうかを調べ,モデル化を試みる。並行して,このシステムを用いてマスキング閾値など聴覚の基礎に関わる実験を行うことで,モデル化の科学的根拠となるデータを得る。 また,令和3年度に実施した複数の純音を含む騒音の評価の続きとして,純音性成分の位相ずれなどに着目した精密な検討を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で,学会がオンライン開催になったために旅費として計上していた額が未使用となった。令和4年度に実施予定の評価実験において,当初計画よりも人員を増やしてデータ採取することを計画しており,その謝金として使用する。
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