純音性成分が含まれる騒音は広帯域の環境騒音よりもアノイアンスが高くなる傾向にあるため,騒音の適切な評価のためには,アノイアンス増加量を定量化し,純音性成分の卓越度と周波数・背景騒音の周波数特性をパラメータとしたペナルティ値を明らかにする必要がある。本研究では,(1)心理評価実験により純音性成分が聴感印象に及ぼす影響を調べ,(2)実験結果に基づいてペナルティモデルの構築を試みた。本年度は,前年までに得た実験結果をもとに,ペナルティモデルの構築に取り組んだ。 (1)評価実験:家電や設備機器から発生する騒音を模擬し,広帯域騒音に50Hzから2000Hzの周波数範囲の純音を含む試験音を用いて「わずらわしさ(アノイアンス,不快感)」および「大きさ(ラウドネス)」を評価させた。純音性成分の卓越度によってアノイアンス等が増加すること,増加の程度が純音周波数および背景騒音の周波数特性によって異なることを明らかにした。 (2)ペナルティモデルの構築:実験により定量化したアノイアンスと騒音指標値の差分をペナルティとしてモデル化を試みた。環境騒音を模擬した試験音では,純音の強度とペナルティ値の関係が非線形であり,純音周波数によっても傾向が異なった。これが,物理的な要因=背景騒音に純音性成分を付加した場合の騒音指標値(A特性音圧レベル)の増加が非線形であること,によると考え,「騒音指標値についての非線形関数+心理評価についての線形関数の和」でペナルティ関数をモデル化した。
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