研究課題/領域番号 |
21K14301
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高取 伸光 京都大学, 工学研究科, 助教 (70880459)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔質材料 / 乾湿風化 / 塩類風化 / 硫酸ナトリウム / 毛細管現象 / 応力ひずみ関係 / 凝灰岩 |
研究実績の概要 |
建造物や屋外文化財の多くはその材料内部に微細な空隙構造を有する多孔質材料であり,その空隙内には水や塩などの物質が出入りする.材料中の物質量やエネルギー量は熱や物質の移動に伴い変化し,それに応じた応力が材料実質部に加わる.このとき材料中の水は材料実質部を膨張あるいは収縮させるような力を生じるため,多孔質材料は乾燥と湿潤を繰り返すことで変形や破壊が生じる.本研究では多孔質材料中の水分状態とそれにより発生する応力の関係を明らか にすることを最終的な目標とし,その測定する手法を確立すること,乾湿繰り返し時における内圧の発生メカニズムを非平衡熱力学の理論をもとに解明することを目的とした. 本年度は,多孔質材料が塩を含んだ際における湿潤時の変形挙動を明らかにすることを目的とし,事前に硫酸ナトリウムを含ませた試験体の吸湿時および吸水時のひずみ挙動の計測を行った.硫酸ナトリウムは無水和物であるThenarditeから十水和物であるMirabiliteへと変化する過程で応力が発生すること,またこの応力は水圧に依存することが知られていることから湿潤方法を吸湿と吸水で分け,各湿潤方法による比較を行った.また,昨年度同様純水を含ませた際の試験体の膨張挙動についても引き続き検討を行った.結果として,吸湿期間を3日とした塩の潮解実験では,直接純水を吸水させた溶解実験ほど大きなひずみは発生しなかった.ただし,本実験における吸湿期間では試験体内の塩が十分に平衡に達していなかった可能性があるため,吸湿期間含め今後さらなる検討が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった多孔質材料の乾湿繰り返し時における材料のひずみ挙動の把握に加え、塩を加えた際の変形挙動についても測定できており、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は塩を含んだ試験体の変形挙動について測定を行ったことで、材料の膨張・収縮挙動に試験体の個体差がある可能性が示唆された。そのため本年度は、応力発生について熱力学に立脚した理論的な観点からの検討を行うことに加え、数値解析によりその再現を試みることで、実験結果と理論値との差について検討を行う。
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