本研究では,非定常性を加味した換気量予測評価手法の構築を念頭に,(A)建物壁面風圧の時空間分布性状と従来換気量推定手法の推定精度の把握,(B)大気条件変動が与える建物換気への影響評価と非定常性の把握を具体目標に掲げている. 令和5年度では目標(A)に対して,気流場と並行して壁面風圧の分布性状や確率性状をL E S(Large-eddy Simulation; 非定常流体解析)やP I V(Particle image velocimetry; 粒子画像流速測定法)による時空間高解像なデータにより調査し,都市幾何形状条件や開口条件に対する気流場・圧力場の包括的なデータ整備に注力すること,目標(B)に対して,風速や壁面風圧を多点同時に取得する屋外実験を併せて実施し,流体解析と屋外実験の両データの差異を検証することを研究計画に挙げていた. 本年度中での壁面風圧のデータ取得には至らなかったものの,工学分野で活用が進む3次元粒子画像流速測定法(3D P I V)により直接的に通風気流を計測し,換気量を同定するといった新たな換気研究手法の体系化を行うと共に、マレーシアの一般家屋であるテラスハウスにおける通風換気現象を対象とした国際共同研究テーマにも取り組み,その換気性状を明らかにした. 研究期間全体を通じて,数値シミュレーションや風洞実験,屋外観測といった相互補完的な手法による気流データを対象として統計解析を実施し、信頼性の高い統計データを収集した.これに基づき,建物配列や換気窓の配置等の異なる建物幾何条件下での,3次元的な通風気流の非一様性・非定常性の理解を深め,建物換気効率を改善する物理パラメータの同定を行った.
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