研究課題/領域番号 |
21K14319
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
阿久井 康平 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 助教 (90779315)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 文化的景観 / 水田景観 / 景観構造 / 水利システム / 集落形成 / 棚田 / 平面形態 / 断面形態 |
研究実績の概要 |
当該年度(2021年度)は、集落景観を対象とした持続可能な文化的景観の保全のあり方を考究するために、河川・水路の水系及び営農と連動した『水利システム』に着眼し、『集落形成』による【景観構造】の評価基準を体系化し、その特質を明らかにするという研究目的の大枠を見据えながら、『水利システム』を構成する「河川」「水路」「ため池」「地形構造」、営農と連動した「田」「畑」など、『集落形成』として「集落」「土地利用」「歴史・文化」「植生」「社寺の立地条件」などの景観構成要素を扱い、これらを平面形態や断面形態といった【景観構造】として捉える評価基準を体系づけ、それぞれの事例の特質を明らかにする類型化の枠組み構築を目的とした。 まず、「文化庁文化財部記念物課監修:日本の文化的景観,2005」などの既往文献を参照しながら、農林水産業と深い関わりを有する景観として示された502件の二次調査のうち、重要地域の水田景観に該当する35件を対象地として抽出した。 次に、水利システム、田、畑、集落形成などの景観構成要素を扱い、水田景観の骨格を示す平面形態として〈河川軸型〉〈河川隣接型〉〈無河川型〉、断面形態として〈山腹型〉〈山麓型〉〈谷間型〉などの【景観構造】の評価基準を体系づけ、類型化の枠組みを構築するとともに、35事例の位置づけを示した。 以上を踏まえ、【営み】の《動態性》の実態との関係を詳細に把握するために、大阪府下の棚田について着眼し、35件の一つに該当する豊能郡能勢町長谷「長谷の棚田」をはじめ「日本の棚田百選」「ポスト棚田百選」に選定される千早赤阪村下赤阪「下赤阪の棚田」、河内長野市「惣代の棚田」、南河内郡河南町「平石の棚田」「持尾の棚田」、大阪唯一の重要文化的景観に選定される泉佐野市「日根荘大木」、大阪府指定棚田地域の豊能町「高山の棚田」「牧の棚田」などの分析対象地を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記した当該年度の研究スケジュールに沿って調査・分析を進めることができ、次年度の詳細分析に向けた事例選定まで進展することが可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に分析対象地として選定した事例をもとに、【営み】の《動態性》の分析として田、畑に関する耕作農地、遊休農地、不耕作地の「営農状況」をはじめ、「空き家・空き地の状況」「水利システムの維持管理の実態や方法」「植生管理の実態や方法」の現地調査、地域史の文献調査、地域の担い手や水利組合などの関係機関へのヒアリング調査を実施しながら、得られた知見を地図情報やGISをもとに詳細図に情報を集約し、空間解析及び比較検証を行い、それぞれの特質を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、現地調査の回数が制限され、調査旅費及び現地調査謝金の収支に差が生じた。これらの次年度使用額は、調査旅費や現地調査謝金をはじめ調査拡充のために使用する。
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