研究実績の概要 |
当該年度は、担い手が所有・管理する「田」「畑」などの運用状況と地域コミュニティと関わりの深い水利組合、地域組織との関係や農空間の景観保全に係る関係性を考察することを目的とした。また、文化的景観の保全に資する動態的持続性の考察に加え、田畑の営農や耕作放棄地の利活用を踏まえた景観構造の視覚的特徴の解明を目的とした。 泉佐野市日根野荘大木地区を対象とした研究では、農空間の水利システムと地域コミュニティの関係に着眼し、水利システムの構造特性と土地改良区の維持管理の実態把握をもとに、地域の自立的な文化的景観の保全に資する方策について明らかにした。得られた知見より、水利システムの維持管理の負担距離の小さい犬鳴溝や和井における世帯が負担距離の大きい下平井や菖蒲井の保全に加担するなどの負担配分に資する方策、町会や番の取り組みの一環として維持管理に関わる仕組みづくりの構築・連動など、近隣型のコミュニティとの互助のシステムの構築による文化的景観の保全強化の可能性を示し、その成果が都市計画学会論文集(Vol.58(3),pp.1462-1469, 2023年10月)に掲載された。 また、豊能町高山地区の棚田における耕作放棄地を利活用したワイナリー事業の展開事例をもとに、担い手の協働、事業展開や里山経営を通じた景観保全との関連性を明らかにし、動態的持続性の可能性を示した。 さらに、田畑の営農を踏まえた景観構造の視覚的特徴に関する研究として、棚田景観の保全の重要性が示される一方、圃場整備事業が進行する豊能町高山地区を対象に、棚田景観の保全のあり方を考察した研究成果が都市計画学会論文集(Vol.58(3),pp.1493-1500, 2023年10月)に掲載された。加えて、魚津市東山地区の田園集落における眺望景観の視覚的特徴を調査・分析し、市が目指す景観保全、地域の歴史・遺産を保存に資する基礎的知見も得た。
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