| 研究課題/領域番号 |
21K14328
|
|---|
| 研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
|---|
研究代表者 |
松林 道雄 国立研究開発法人建築研究所, 建築生産研究グループ, 研究員 (50804671)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
| キーワード | BIM / 漏水 / 視覚化 / ジオメトリ操作 / 知識表現 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、BIMのデータ構造を踏まえ、要素の空間・属性情報や要素間の関係性を用いて、いくつかの施設技術者の知識・経験を記述し、施設管理業務に活用するための手法として開発することにある。実施内容は「BIMデータを用いた施設技術者の知識・経験の表現」、「国立大学法人等施設を対象とした現地調査・インタビュー調査」と「BIMデータの構築・充実化」の3項目から構成される。
2021年度の研究実績は次の通りである。
「BIMデータを用いた施設技術者の知識・経験の表現」に関しては、屋上防水の劣化に付随して発生する雨漏り・水漏れを題材に取り上げ、これの発見・理解を助けるためのツールを開発した。天井裏など目視で確認できない箇所に配置される漏水に関連のある部位等をまとめて平面図ビュー上に表示する。調べた結果を平面図ビュー上に表示・描画させるところまでツールの開発を進めた。
「国立大学法人等施設を対象とした現地調査・インタビュー調査」に関しては、国立大学の施設職員に対するインタビュー及び国立大学施設の現地調査を数回実施した。今年度開発に取り組んだツールの参考となる内容を中心に情報を得た。また、次の題材の選定に向けて、機械設備と電気設備に関連する施設管理業務上の課題についての情報を得た。
「BIMデータの構築・充実化」に関しては、研究代表者の所属機関の変更に伴い対象施設を見直した。現所属機関の事務所建築を取り扱い対象に追加した。当施設のデータ構築に取組み、建築と機械設備のBIMの一部を構築した。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「BIMデータを用いた施設技術者の知識・経験の表現」においては、既存建築物の屋上防水の劣化に付随して発生する雨漏り・水漏れを題材に取り上げ、これの発見・理解を助けるためのツールの開発に取り組んだ。当初の目標として、天井裏など目視で確認できない箇所に配置される発生箇所に隣接する他部位等をまとめて平面図ビュー上で視覚的に確認できることを目指した。ツールは部屋を基点として調べることとした。BIM中に集約される要素の形状変更また移動操作を通じて、調べたい部屋の上部に屋上スラブがあるかどうかを調べる。そしてこの結果のジオメトリに接触する他部位（梁、壁、柱）のジオメトリを調べる。発生箇所（屋上防水、スラブ）に接触する部位（梁等）を経由して水が室内に侵入するという施設技術者の知識を参考とした。発生箇所から隣接する部位を順番に伝っていく段階をBIM内の複数要素とそのジオメトリ操作を用いて記述した。ツールとしては調べた結果を平面図ビュー上に表示させるところまで開発を進めた。
「国立大学法人等施設を対象とした現地調査・インタビュー調査」においては、研究代表者の所属機関変更に伴い、主たる訪問先を見直した。国立大学の施設職員へのインタビューを数回実施した。また、国立大学施設を対象にケーススタディの故障に関連する部位の撮影等を数回実施した。今年度取組んだツール開発に関連するものを中心に情報収集した。
「BIMデータの構築・充実化」においては、研究代表者の所属機関変更に伴い対象施設を見直した。主な取組みとして、現所属機関の事務所建築について設計資料を収集し、これを用いてのBIM構築に取組んだ。
2021年度の研究成果については、日本建築学会情報システム技術委員会主催のシンポジウムにて口頭発表を行った。また、当年度までの研究成果をまとめ、国際会議プロシーディングへ投稿した。
|
| 今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究は次の通りに進めていく。
「BIMデータを用いた施設技術者の知識・経験の表現」においては、一つに2021年度にケーススタディの対象として取り上げた漏水について継続して開発に取り組む。該当箇所の描画に加えて、これに関連する何らかの定量的表現を試みる。補修費用や作業量の概算を想定しており、この算出の仕方について、施設技術者へインタビューするなどし参考情報を収集する。もう一つに新しい題材の設定に取り組む。施設技術者へのインタビュー、文献調査を通じて題材を検討する。
「国立大学法人等施設を対象とした現地調査・インタビュー調査」においては、ツール開発の参考となる情報の収集、他の故障事例を探る作業に取り組む。国立大学施設での調査に関しては、新型コロナウィルス感染症の状況を見て実施回数、また通信による代替手段の有無を決定したい。
「BIMデータの構築・充実化」においては、BIMの作り込みは国立大学施設と研究所施設を並行して進めていく。新しい題材設定を見据えて、機械設備と電気設備の内容充実に焦点を当てて構築作業を進める。
成果発表については、2022年度までの研究成果の蓄積を対象に論文誌または国際会議プロシーディングスへの掲載を引き続き目指す。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
主な理由として、予定していた論文搭載費また学会参加費の支払時期が次年度以降となったことが挙げられる。該当予算は次年度での執行を予定している。
|
