2023年度の研究実績は次の通りである。「BIMデータを用いた施設技術者の知識・経験の表現」に関しては、雨漏り・水漏れの発見・理解を助けるためのツールを開発する中で、外壁から室内に漏水するケースについて取り組んだ。BIMモデル内に配置される要素の形状変更また移動といった操作を通じて、候補の部屋及び外壁に接する床スラブまたは下方の外壁を調べる。そしてこの結果のジオメトリに接触する他部位(梁、壁、柱)の有無を調べる。拾い上げた要素は部位で区別して平面図ビュー上に表示させた。ツール開発に当たっては「国立大学法人等施設を対象とした現地調査・インタビュー調査」から得た情報を参考とした。「BIMデータの構築・充実化」に関しては、事務所建築及び国立大学法人等施設のBIMモデルについて、開発ツールの動作確認に対応できるようデータの修正に取り組んだ。 研究期間においては、屋上スラブや外壁が起点となり外部から雨水が建物内に侵入するという故障事例に焦点を絞った。侵入した水が媒体となる部位に発生するひびや表面を伝って他の部位に移動していくという施設技術者の知識をBIMソフトウェア上で動作するツールに対応させた。BIMモデル内に配置される一つ一つのオブジェクトは形状だけでなく属性値も持つ。思考で捉える部位間の関係性を、要素の形状変更や移動といった操作として記述することにより、知識や経験にあたる内容をBIMソフトウェア上で実行できるプログラムとして表現した。思考にて仮想的な建物部位を操作することを、出来上がったBIMモデルに対するBIMソフトウェア上での操作に対応させた点において、BIMデータの使い方に関する新しい見方を提示できたと考える。
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