最終年度においては、研究成果を日本建築学会計画系論文集に投稿している。2024年6月号に掲載が決定した。年度内の掲載には至らなかったが、成果をまとめられたことは評価したい。その論文で明らかにしたこととしては、ネルヴィが帝国のアーチを通じて、古代ローマ帝国のローマンコンクリートといった素材である無筋コンクリートで巨大なアーチを作り、建設技術的、構法的継承を試みていることを明らかにした。また、その方法として、リバース・エンジニアリングというものを導入し、その当時において検証していたことを、現在の解析技術で分析を行った。その結果を根拠としている。さらに、ネルヴィと共に設計に関わったリベラという建築家との思想の違いについて検証を行っている。特にネルヴィは四角形、リベラは楕円形でアーチの断面を考えていた。その違いは、アーチの中に生じるせん断力や変位の生じる大きさが異なっている。ネルヴィの考えた案の方が、そのいずれもにおいても小さく、無筋という弱い素材において、内部の応力は小さい方が良い。ネルヴィは構造の専門家として、合理的な判断をしていることが明らかになった。そして、リバースエンジニアリングを導入することで、得られた成果についても言及している。残された図面や言説だけでは、考察できなかった彼らの思想の深い部分にまで、思考をたどることができている。実施されなかった建築や、現存しない建築作品において、この分析方法が効果的であることがわかった。
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