本研究の目的は、10kg級の超小型衛星でも指向精度1秒角が達成可能な宇宙望遠鏡を、MEMSミラーを使用して実現することにある。 1年目は、主にMEMSミラーのフィードバック制御を行うための光学系の設計と実験を主に実施した。研究提案時の概念的な光学系の設計状態から各部の検討を詳細化し、概念実証機に相応しく市場での調達が容易な光学素子を使用して光学実験台上に実験光学系を構築した。一方で、世界的な半導体不足の影響からMEMSミラーを制御するための電子回路を構成するための部品が入手できなくなり、計画に遅れが生じた。 2年目には、入手できなくなった正規品の制御回路の代替となる回路の開発から着手し、複数回の試作を経てPCから制御することのできるMEMSミラー駆動回路が完成した。1年目に構築した光学実験台上の試験装置へと統合し、レーザー光源を利用したオープンループ状態での駆動実験を行い、実験には十分な約1秒角精度のMEMSミラー駆動能力があることを確認した。 MEMSミラーの制御回路の開発と平行して、望遠鏡にて撮影した星像位置をリアルタイムに求めるための画像処理ソフトウェアを開発した。実験室内に構築した暗室とスターシミュレータを利用し、サブピクセル単位かつ20Hzで星像位置を検出可能であることを確認した。 最終年度である3年目の本年度では、2年目までに構築した星像検出光学系とMEMSミラー駆動回路を組み合わせ、想定通りの指向精度が得られるか否かを実験により評価した。星像位置の検出精度は対象物の明るさに依存して変化するため、実験装置を屋外に持ち出すことができるよう改修したうえで電動架台上に搭載し、実際の恒星に対して追従制御させ、衛星搭載時に生じると考えられる程度の外乱による変動を補正できることが確認できた。 なお本研究課題の成果を活用し、実際の宇宙望遠鏡衛星を開発する計画が進行中である。
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