研究課題
まず,任意形状の宇宙機に適用可能な,太陽輻射圧下における姿勢運動と安定性解析を体系的にまとめた上で,その理解に基づいた一般的な姿勢制御則(マヌーバ,維持,アンローディング)を整理した.この内容は論文として学術雑誌に投稿し,掲載された.次に,セイルのたわみや探査機重心ずれ等のモデル誤差に対してロバスト性が期待され,超小型探査機に搭載できる見込みがある(できるだけシンプルな機構の),一軸ジンバル付きの傘型ソーラーセイルを取り上げ,軌道・姿勢同時制御に必要な一連の定式化を行った.特に,ジンバル角に対応する姿勢の平衡点を解析的に求め,軌道設計(制御)時の計算コストを低減できるようにした.また,軌道・姿勢同時制御の制御フローを考案し,それに含まれる各制御則の妥当性を数値計算で確認した.一方,超小型ミッションへの応用を見据え,月軌道プラットフォームゲートウェイからの放出を想定した,ソーラーセイルによる太陽-地球系ラグランジュ点周りのハロー軌道への遷移および長期間の維持を行うミッションの軌道設計法を体系化し,様々な放出条件に対して軌道の成立性を調査した.小型電気推進系の搭載を前提としているが,光子加速を積極的に利用することで,推進剤の消費を大きく低減できる(場合によっては推進剤フリーとなる)ことを確認した.さらに,地球-月系ラグランジュ点周りのソーラーセイル特有の周期軌道および準周期軌道の解析を行った.特に,高忠実度な力学モデルでも月に対する幾何学関係の周期性をできるだけ保つ準周期軌道の設計法を提案し,設計可能な軌道を広く調査した.
1: 当初の計画以上に進展している
当初は任意の宇宙機モデルに対する一般的な軌道・姿勢同時制御を検討する方針でいたが,具体的なモデルとして,一軸ジンバル付きの傘型ソーラーセイルに注目したことで,制御入力(ジンバル角)に対する姿勢の平衡点が解析的に求まり,それをきっかけに各制御の考案や検証が迅速に進むこととなった.また,ソーラーセイルによる月軌道プラットフォームゲートウェイから太陽-地球系ラグランジュ点周りのハロー軌道への遷移および長期間の維持を行うミッションへの応用を行う計画であったが,その基盤となる軌道設計法を1年目で体系化できたことは,当初の想定以上である.さらに,地球-月系ラグランジュ点周りの(準)周期軌道については,軌道設計法の提案や詳細解析は当初の計画以上の内容である.
まず,月軌道プラットフォームゲートウェイから太陽-地球系ラグランジュ点周りのハロー軌道への遷移および長期間の維持を行うミッションへの応用については,これまでは可変形状機能による軌道・姿勢同時制御とは独立して(理想的にできると仮定して)検討してきたが,これらを統合して,ミッションシナリオの中で考案した制御フローが有効であることを数値計算で検証する.また,傘型ソーラーセイルにおけるセイルのたわみ等のモデル誤差の影響,ロバスト性を定量的に評価する.さらに,小型電気推進系を使用する際に発生するトルクを補償する制御則を新たに考案する.
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Acta Astronautica
巻: 193 ページ: 182~196
10.1016/j.actaastro.2021.12.044