研究課題/領域番号 |
21K14347
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齊藤 允教 日本大学, 理工学部, 准教授 (20801020)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 冷炎振動 / 深層学習 / 複数燃料液滴 / 微小重力実験 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
炭化水素系燃料の自発点火過程で生じる冷炎を対象として,数値シミュレーション,観測ロケット・落下塔実験および深層学習による低次元化解析により,冷炎ダイナミクスの解明を目指している.今年度の計画は,①数値シミュレーション環境の構築と冷炎振動のデータ生成,②落下塔を用いた微小重力環境での燃焼実験準備と実施,③ロケット実験の実施,④深層学習環境の構築,および深層学習の回路設計である. ①の数値シミュレーションの設備導入として,数値計算ソフトのライセンス購入を実施し,計算環境の構築を行った.これにより,9液滴の液滴列を対象とした計算を開始し,複数回振動するデータの生成を行った.②の落下塔を用いた微小重力環境での燃焼実験に向けて,液滴を燃焼させる電気炉の開発を実施し,通常重力環境で燃焼実験が可能であることを確認した.更に,通常重力環境において,冷炎による温度上昇を中赤外放射強度計測により捉えることで,冷炎を間接的に観測出来ることを確認した.本観測手法の確立は,当初計画に無いエクストラサクセスであり,次年度以降の実験実施に向けた貴重な成果である.③の観測ロケットを用いた実験による基準データの取得は,射場トラブル等により2022年11月以降の実施となる.④では,高性能GPUを導入し,分析環境の構築を実施した.回路設計では,①の数値シミュレーションで生成したデータを入力データとして用いて,変分自己符号化器により低次元化された状態空間へ写像することで,冷炎振動の状態区別を達成し,冷炎振動分析への変分自己符号化器の適用可能性を示すことが出来た.本成果は,国内学会で2件発表した.また,査読付きの国際学会へ投稿を行い,審査を通過した.2022年7月に発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①の数値シミュレーションによるビッグデータ生成においては,計算のライセンスを導入し,計算環境の構築は終了した.それに引き続き,9液滴の液滴列を対象としてデータ生成を順調に進めており,複数回冷炎が振動するデータを一部取得済みである.②の落下塔を使用した地上実験では,新型コロナウイルスの影響により,若干の遅れが生じているが,中赤外放射強度計測による冷炎観測手法を確立させ,通常重力環境ではデータの取得が出来ている.③のロケット実験では,フライトモデルは完成しており,各種試験を除いて準備は順調に進んでいる.一方で,打ち上げを予定している射場でのトラブルにより,2022年3月に当初予定していた実験が第三四半期以降にずれ込む見込みである.④の深層学習環境の構築,および深層学習の回路設計では,高性能GPUを導入し,解析環境の構築は実施済みである.また,実験データが取得できていないため未検定ではあるが,①の計算で出力したデータを用いて変分自己符号化器による分析はスケジュールの前倒しで進めており,既に設計した回路を用いて低次元状態空間上で状態の区別を行うとともに,モードが時間発展に伴いどのように変化していくか等を見出すことが出来ている.以上の成果は,国内の学会にて発表を実施した.また,査読付きの国際学会での発表に採択されており,2022年7月に発表予定である. 以上のように,実験で一部遅れを生じているが,分析手法は既に確立し,成果の一部は国内発表を行うなど,実験以外は前倒しで進めることが出来ており,全体的に概ね計画通り進めることが出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年3月に当初予定していたロケット実験が第三四半期以降にずれ込む見込みであり,数値計算の検定データ取得の遅れが見込まれている.そのため,落下塔を用いた地上実験の早期実施に注力し,先行して地上データの検定から開始する予定である.数値計算および深層学習については,順調に進んでいるため,引き続き初期条件を変更した計算の実施とビッグデータの生成,および深層学習のハイパーパラメータのチューニングなどを継続して実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2022年3月に予定していた日独共同の観測ロケット実験が,新型コロナウイルスや射場トラブル等により2022年11月へ延期となった.これにより,渡航費で計上していた旅費がそのまま次年度へ繰り越しとなる.また,ロケット実験で使用するロケットのハードウェアアップデートにより,圧力センサを調達する必要性が生じた.そのため,当初予定していた計算用コンピュータ周辺機器の調達は優先度を考慮し購入を見送り,その差額分が余剰として次年度への繰り越しとなる.
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