研究課題
本研究の目的はソーラーセイルや編隊飛行衛星に搭載可能な大面積マイクロ波干渉計を実現させるために必要な基準信号の無線分配技術を実証する事である。1年度目の実施計画として、ブレッドボードを使用した無線基準信号無線分配システムの施策を提案していた。今年度の研究実績として、システムのシミュレーションを実施し、ブレッドボードによる実証試験を実施し、提案技術の実証に成功した。さらに追加の実施として、試作品の基板を起こし、専用基板上での実証に成功した。専用基板の設計を見直し、2回のイタレーションでも実証の実施計画中である。具体的な実証内容として、「基地ノード」局で種となる高安定発振器をPLLの基準信号として2.4GHzの副基準信号を生成し、これを無線で「観測ノード」局に伝送した。観測ノードでは受信した2.4GHzの副基準信号から観測に使用する5.7GHzの信号を生成した。今年度までの研究実施内容をFFSS2021国際学会で発表し、IGARSS2022、IAC2022国際学会に採択され、発表予定である。FFSS2021では大面積膜面マイクロ波干渉計が切り開く新たなビジョンについて発表した。特に静止軌道に設置するマイクロ波放射計、木星や土星等ガス惑星の深層部の観測、静止軌道より発電した大電力を地上に伝送する発電衛星が実現可能になる。IGARSS2022では基準信号無線分配システム試作機の製作と評価の成功実績について発表する。IAC2022では革新的衛星技術実証3号機の搭載に向け開発した膜面搭載型マイクロ波干渉計の開発・運用状況と本研究の展望について発表する。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績にも述べているように、1年度目に実施計画をしていた基準信号の無線分配技術のシミュレーションとブレッドボードによる実証を終えた。さらに追加の実施として、試作用の基板を起こし、専用の施策基板で技術を実証した(2回のイタレーションをかけ、両方成功した)。以上から本研究は当初の計画以上に進展していると言える。残る研究期間中にこの施策基板をアンテナ基板に搭載し、基準信号無線分配によるマイクロ波干渉計を実証することで本研究の目的は達成できる。今年度までの研究実施内容をFFSS2021国際学会で発表し、IGARSS2022、IAC2022国際学会に採択され、発表予定である。
研究計画調書に記載しているように、本技術はソーラーセイル超軽量大面積構造体と編隊飛行衛星で運用可能なマイクロ波干渉計技術の実証を目的としている。実運用に向けて試作機の小型薄型化と周波数の安定性(フェーズノイズ)の安定性の向上化を図る。特にソーラーセイルで実施するマイクロ波干渉法においては、基板が薄膜でなくとも十分実証できる可能性が革新的衛星技術実証3号機の搭載に向け開発したマイクロ波干渉計で示される。この結果から、実運用に向けては周波数の安定性の向上が最重要と判断し、試作機の機能向上化を推進する。
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Acta Astronautica
巻: 181 ページ: 362-376
10.1016/j.actaastro.2021.01.020