研究課題
本研究では任意の海域の表層流をオンデマンドに把握することを目的として、海洋表層ドリフターの大規模展開による海洋流動場の把握手法を検討している。今年度は初年度に引き続きドリフターの浮体形状、テレメトリを含むセンサ、電源、オンボード解析プログラムの改善を行った。特に電源については展開機会が北極海となることを念頭におき、ソーラーパネルではなく、リチウム一次電池への電源の変更を行った。北極海でのドリフターの展開は主に2022年9月3日に実施し、開発したブイの展開を行った。取得したデータからは風向きによって漂流方向が変わる様子や、慣性振動が確認できた。また、氷縁域に展開したドリフターのデータに基づく水平拡散係数は大きく見積もられた。開発したドリフターの多点展開により、海洋拡散現象を調べる道筋を示すデータとなったと考えられる。一方、電源は6ヶ月以上の容量を持ち合わせているはずであったが、10月中旬より相次いでデータ送信が間欠的になり、11月に入ってからは殆どデータ送信が行われないという結果となった。海氷の結氷時期より問題が生じたため、データ通信アンテナ付近への着氷を含む海水付着や低温環境におけるバッテリーの性能低下などが原因として考えられる。また、展開後数日でデータ送信が見られなくなったドリフターも確認、水密等の問題が初期不良として現れたものと考えられる。問題の原因究明と対策を行い、確実にデータが取得できる様に修正を行うことが必要である
3: やや遅れている
昨年度は沿岸における展開・回収を行う実験的な取り組みを主に行ったが、本年度は初年度に引き続きドリフターの浮体形状、テレメトリを含むセンサ、電源、オンボード解析プログラムの改善を行った上で、所属研究室が参加する北極航海を展開機会と捉え、外洋におけるデータ取得を実行することができた。一方で、初年度に引き続き計画していた水槽漂流性能試験の実施よりも実海域での展開によるデータ取得を優先したため、未実施となった。また、開発したドリフターの性能についても上述の通り、データ送信等について改善が必要であるため、「やや遅れている」とした。
氷縁域を対象として、ドリフターの多点展開による流動場の平均場ならびに移流に伴う海洋拡散の定量的評価を行う。2022年度の展開における問題の原因究明と対策を行い、確実にデータが取得できる様に対策を行う。具体的には機器の構成要素となっている浮体・ドローグの形状、テレメトリ含むセンサ、電源、オンボード解析プログラムそれぞれについて問題の確認と改善を試みる。また、過去の多点展開に関する先行研究を参照し、海洋のさまざまな渦による海洋水平乱流拡散を念頭に複雑な流動場を表現するための展開方法についても再度検討を行う。また、風による漂流影響を明示する方法として、これまで計測していた波浪および漂流軌跡に加え風速の測定を試みる。
開発したドリフターによる観測を実施したところ、改善必要箇所が確認され、当該年度の研究計画に変更が必要となり、次年度使用額が生じている。
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Polar Research
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OCEANS 2022, Hampton Roads
10.1109/OCEANS47191.2022.9977128