今年度は有機的マーケティングシステムを実現するために前年度まで構築してきた成果を実際のマーケティングの場で適用し、実験を行った。また、企業との調整がつかず、実験が難しいと判断されたモデルについては、簡易的な問題設定を用意し、そのもとで実験を行い適用例を示した。前年度までの研究成果から得られたアイディアを更に高度化し、いくつかの新しい研究を立ち上げた。 具体的には、ユーザの潜在的な購買意欲を埋め込みモデルに基づきデータから抽出し、そこからマーケティングアクションとしてクーポンを配布するユーザを決定する実験を行い、さらにその効果について検証した。また、複数の種類のクーポン配布のための実験計画へと問題を一般化した場合の実験を行い、売り上げの向上に貢献した。すなわちモデルの実世界での有効性を示した。ただし、この実験は実験計画→検証という流れを示したものであり、実験計画→検証を繰り返していく有機的マーケティングシステムの実証実験については、企業との調整がつかなかった。そこでマンゴーを非破壊で美味しさを見極める問題へと適用例を変え、味に関するフィードバックと食べるマンゴーの選択を有機的マーケティングシステムに見立て、食味実験によりモデルの実社会への適用例を示した。当初の予定を完璧に達成することは難しかったものの、これにより、当該研究の実社会への有効性が示唆された。 本研究では、有機的マーケティングシステムのモデルを構築し、そこから実務的に役だつようなシステムの構築を目指した。モデルの構築は達成したが、システムの構築は完全には達成できなかった。ただし部分的な実証実験や適用分野を変えた場合の有効性は示すことができたため、一定の成果を上げることができたと考えている。
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