研究課題/領域番号 |
21K14371
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 真理 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 講師 (20778211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スケジューリング / 確率計画 |
研究実績の概要 |
本年度は,「(1)問題のモデル化」を下記のとおり遂行した. 本項目における問題とは,何日に手術を行うかを決定する手術のスケジューリング問題と,どの手術室で何時から手術を開始するかを決定する手術室のスケジューリング問題である.手術のスケジューリングにおいては,緊急手術発生の不確実性を考慮した.確率変数である緊急手術容量が離散確率分布に従うとしたとき,手術スタッフの残業時間と待機的手術の持ち越し時間を最小にした.手術室のスケジューリングにおいては,手術の所要時間の不確実性を考慮した. 確率変数である手術の所要時間が離散確率分布に従うとしたとき,手術の所要時間の遅延が,ある一定割合を超えた期待値(条件付きバリュー・アット・リスク: CVaR)を最小にした.手術の所要時間は対数正規分布に従うことが既存研究より証明されており,ここでも対数正規分布に従うと仮定した.複数の手術の所要時間の組み合わせ(シナリオ)を生成した.また,これらのシナリオの生起確率は実データまたは遅延時間が長くなる傾向がある複合手術の多い病院のベンチマークデータより分布を仮定した.ここでは一様分布を仮定した.手術の所要時間の組み合わせのシナリオを100個生成し,数値分析を行った.これらのシナリオは実データから作成した.手術のスケジューリングにおいて,既存モデルとの精度比較によって,本モデルの有効性を検証した.さらに,コスト面から緊急手術専用の手術室の有無による影響を分析した.手術室のスケジューリングにおいて,手術の遅延時間の期待値とCVaRを目的関数に考慮し,それらの考慮度合いを変更した結果, 手術の遅延時間の期待値とCVaRにトレードオフの関係があること,両方を目的関数に考慮することで,一方のみを考慮するときよりも総待ち時間が最小になることが明らかになった. 本年度は,上記の成果の一部を,査読付論文,講演会や国際・国内会議にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり,手術のスケジューリング問題と手術室のスケジューリング問題を確率計画問題として定式化し,おおむね順調に進んでいるものと考えられる.本年度は,上記のいくつかの進捗を査読付論文,講演会や国内・国際会議で発表し,関連研究者と議論することができ,来年度の研究内容がより明確になった.
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの項目(1)の提案モデルを手術と手術室数を増加した問題へ適用していき,(2)の確率計画問題の解法を提案することを考えている.今後の研究の詳細は以下のとおりである. 想定されるシナリオの数が増えるにつれ,変数と制約式の数も増大するので,大規模な線形計画問題となりうる.ただ,コンピューターの処理能力や汎用ソルバーの性能向上により,大規模な線形計画問題であっても高速に効率的に解ける場合が多い.それでも実行可能な時間内に最適解を得られない場合,分解法を用いると有効であることが一般的に知られている.分解法とは,大規模な問題をより小さな問題に分解し,それを反復して解くことにより最適解を求める方法である.とくに,本問題のように,多数の整数の変数を含み,大規模な混合整数線形計画の問題となる場合には,分解法により効率的に解ける可能性がある.分解法の有名な手法の一つに,Bendersの分解を応用したL型法があり,本研究では本手法を用いて,(1)で定式化した問題を解く.また,研究成果については進捗を国内学会や国際会議で発表すると共にオペレーションズ・リサーチや医療系のジャーナルに投稿することを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時は国内会議が現地で開催される予定であったが,オンライン開催に変更され,未使用額が生じた.また本研究成果を発表する予定であった国際会議が次年度へ延期され,未使用額が生じた.参加予定であった国際会議は次年度に開催される予定となったため,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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