2023年度の研究では、1944年東南海地震に関して、本研究を通して既に選定した、最も観測事実を再現する震源モデルから得られる計算倒壊率に関して、大被害地域での観測倒壊率との一致度の向上にむけた検討を行い、結果、より良い一致度を得ることができた。 また、1923年関東地震に関しては、去年度決定した大被害地域の強震動評価地点のうち、未観測地点の観測を行い、計算した微動の水平上下比MHVRにEMR法を適用し擬似地震動水平上下動比pEHVRを求めた。それに上下動補正係数VACFを乗じることで擬似サイト増幅特性pHSAFを求めた。多くの地点で、pHSAFの一次ピーク振動数は建物の大被害に直結する0.5~2Hzの間にあることが分かった。また、建物倒壊率と0.5~2.0Hzにおける最大振幅の関係性を確認した。その結果、20地点では0.5~2.0Hzでの振幅が10を超えていた一方、最大振幅が大きくなくても、建物被害が大きかった地点も数地点あり、このような地点では、サイト増幅特性だけではなく震源の影響を建物被害の要因として考える必要があることが示唆された。この結果をとりまとめ、日本国内では建築学会・地震工学会、国外では米国地震学会(SSA)Annual meetingにおいて発表を行った。震源モデルについては、上記で得られたサイト増幅特性が大きくなくても建物被害が大きかった地点の位置関係を拘束条件としてSMGAを配置したモデルの複数の構築を試みた。 研究期間全体を通じてみると、震源における短周期生成過程が東北地方太平洋沖地震と同様に陸側に配置されているのか異なるかという、当初設定した学術的問いに対しては、東南海地震で得られた最も観測事実を再現するモデルでは同じく陸側深くに配置された結果となった。今後より多くの地震に本スキームを適用することで、掲げた問いに対しての答えが出ることが期待される。
|