本研究は,災害発生後の避難経路として駐車場や公園,寺社仏閣などの所謂道路外を通行できるかの判断をスマートウォッチ上で実現可能であるかを明らかにすることを目標に調査されたものである.本研究の調査フィールドには,香川県高松市を選定した.その理由として,海近くの平坦な場所に都心があり,南海トラフ地震の際には最大で9mの津波が想定されている地域であり,津波を伴う大地震発生時には一刻も早い避難が求められる地域であるためである.本研究では,研究計画に従って,実地調査,アプリケーションデザインの作成,VR空間上での実験を実施し,その成果を国際会議で発表,議論,論文を書籍掲載することで本研究コンセプトの国際的な周知につなげた.実験では360度カメラを用いて道路外へのショートカットが求められるスポットの動画映像を撮影し,逃げるべきおおよその方角を提示したうえで,その判断を問うものであった.そのスポットは公園,神社,駐車場などであり,そのスポットを知らない者を被験者として実験を実施し,スマートウォッチに提示された簡略な地図情報提示の効果(実際に道路外をショートカットして避難しようと思うのか)や要件(避難しようと思える要素)を抽出した.なお,こちらの実験で得られた知見には都市の特徴や被験者の経験に依存する箇所が多くあることがわかった.その一方で,本実験手法がスマートウォッチを用いた避難のために道路外を通行する判断を支援するシステムを拡充するうえで貢献できると考えられる結果も得られたといえる.今後は本研究に関連する知見をデジタルツインを用いた実験で深化する予定である.
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