研究課題/領域番号 |
21K14398
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
松浦 慧介 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (50824017)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非平衡状態 / 相競合 / 強相関電子系 / 磁気ドメイン |
研究実績の概要 |
近年、強相関電子物質では、熱平衡状態の研究だけでなく、励起状態や非平衡状態の研究がますます注目されている。例えば、電流パルスによる超急冷法で、様々な強相関物質中の過冷却準安定状態が明らかになってきた。 本研究課題では、急冷による過冷却準安定状態の知見を活用して、強相関電子物質における“定常流“下での非平衡状態を探索する。今年度は、磁場掃引速度及び温度掃引速度を緻密に制御した磁化測定や磁気力顕微鏡を用いた実空間磁気像のイメージングによって、熱力学平衡相図と準安定性との関係を主に調べた。1つの物質において、2つの熱平衡相が基底状態として相競合している場合、温度-外場相図上でしばしば低温でのヒステリシス拡大が現れる。申請者のマンガン酸化物における急冷実験の研究から、低温でのヒステリシス拡大と準安定状態の関連が明らかになったが、マンガン酸化物をはじめとするいくつかの物質で低温におけるヒステリシス領域拡大の起源を実験的に調べた例はあまりなかった。 まず、反強磁性相とフェリ磁性相が相競合している物質を対象として、ヒステリシスが拡大する温度以下で、磁場掃引速度を制御したところ、ヒステリシスの境界が磁場掃引速度に強く依存していることが実験的にわかった。また、ヒステリシス拡大領域において、磁気力顕微鏡によって磁気像を調べたところ、反強磁性ドメインの成長過程の観測に成功した。このドメイン成長過程がクリープ的な挙動(熱ゆらぎの助けを借りたゆっくりとした動き)を示すこともわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた電流印加による非平衡状態は実現できていないが、準安定状態の制御のカギを握っているヒステリシスの起源に関して知見が得られたため、この知見を基にした非平衡状態探索への展開が期待されるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究から得られた知見を基にして、試料の微細化と電流印加による非平衡状態の探索の研究を引き続き継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費に充てる予定だった経費を、物品購入費に回したため。
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