本研究では、ランタノイドイオンに対してポルフィリンやフタロシアニンが、金属イオンをサンドイッチするような構造で配位したダブルデッカー錯体をコンポーネントとして、互いに重なり合わせることなくタイル状に密に2次元集積化し、その特性を明らかにすることを目的としている。 2022年度は、2021年度に引き続き、両親媒性のダブルデッカー錯体の合成を行った。親水性のポルフィリンと疎水性のポルフィリン、親水性のポルフィリンと疎水性のフタロシアニンからなる、配位子の組み合わせの異なるダブルデッカー錯体の合成を達成した。いずれの錯体においても、粘土化合物のカチオン交換容量のほぼ100%に相当する数の錯体が粘土表面に吸着担持されることが紫外可視吸収スペクトル測定を用いた滴定実験から明らかとなった。すなわち、粘土化合物上への両親媒性ダブルデッカー錯体の2次元集積化においては、接合面となる親水性のポルフィリンの構造が重要な役割を果たしていると考えられる。また、カチオン交換容量に対して過剰量の錯体を添加した場合には、吸収スペクトルが錯体-粘土ナノシート複合体と溶液中の錯体の足し合わせとなることが分かった。このことは、余剰の錯体が添加された状態においても粘土ナノシート上で、錯体が凝集構造を形成していないことを示唆している。 現在は、ダブルデッカー錯体-粘土ナノシート複合体の積層数を制御しながらの薄膜化や、ナノシート間を架橋するようなマルチデッカー錯体の合成にも着手している。
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