研究課題/領域番号 |
21K14412
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
七井 靖 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 助教 (80755166)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛍光体 / 近赤外線 / 結晶化ガラス / ガラス / 3d遷移金属イオン / 希土類イオン |
研究実績の概要 |
今年度はクロムイオン添加ゲルマン酸系ガラスとしてCr2O3-CaO-GeO2前駆体ガラスの作製条件および熱処理温度が前駆体ガラスに与える影響を解明した。以下にその詳細を示す。 ガラスが得られる原料組成比を明らかにし、Cr2O3を添加することで700-1300 nmで発光する前駆体ガラスが得られた。この前駆体ガラスを650℃から800℃の範囲で熱処理し、結晶化の有無や発光特性の変化について明らかにした。粉末X線回折の結果から、熱処理温度700℃以上でCa2Ge7O16の析出が確認でき、その際のシェラーの式より見積もった結晶子サイズは13 nmであった。また、結晶子サイズは熱処理温度とともに増加した。ラマン散乱スペクトルでは主にGeとOで構成される四面体および八面体構造、それらで構成される環状構造に起因したピークが観察でき、熱処理温度の増加に伴いピークの先鋭化が確認された。 発光スペクトルは前駆体ガラスではCr3+の4T2準位から4A2準位への遷移に起因した発光のみが観察された。熱処理温度の増加に伴いその発光および励起スペクトルのピーク波長は短波長側にシフトし、新たに2E準位から4A2準位への遷移に起因した発光も現れた。Cr3+周りの局所構造が変化し、より強い配位子場の中に置かれたことを、その結晶場パラメータをも積もることで明らかにした。また、相対的な発光強度は熱処理温度の増加とともに強くなり、前駆体ガラスと比較して5倍以上の値になった。発光減衰時間の熱処理温度依存性より、結晶化によりCr3+の非輻射遷移確率が低下したためだと考えられる。以上の成果は応用物理学会の学術講演会で報告するとともに、現在学術論文にまとめている。 また、本研究に係る成果が認められ、本研究の応用分野の研究者・技術者が集まる近赤外研究会において2021年度NIR Advance Awardを受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲルマン酸系ガラスでこれまでに報告の無い結晶相(Ca2Ge7O16)の析出条件を明らかにし、Cr3+の発光波長域を制御することができた。また、結晶化挙動について粉末X線回折やラマン散乱スペクトルから得られたガラス及び結晶の構造情報と結び付けて議論でき、それらの成果を現在学術論文にまとめているところである。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
新規結晶相であるCa2Ge7O16の析出条件は明らかになったが、結晶化ガラスの透光性との両立については改善の余地がある。そこで、熱処理条件が結晶化挙動に与える影響について、ガラスおよび結晶の構造評価も含めてより詳細に解明する。また、その過程でガラス組成にも変更を加え、透光性を確保しつつ、かつ、高い発光効率を持つ母材組成を探索する。さらに、前駆体ガラスおよび熱処理後の試料についてXPSスペクトルを測定し、クロムイオンの価数についても情報を得ることで、クロムイオンの価数制御に関する知見も得られるように実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う学会・研究会のオンライン化、および、入札による物品購入に伴う見積額と実際の購入額の差異による。次年度使用額については予定より消費の激しい消耗品の購入費に充てる予定である。
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