本研究では、室温マルチフェロイック物質の有力候補のε-Fe2O3に着目した。鉄酸化物であるε-Fe2O3は価数の揺らぎによるリーク電流が多く、本来の強誘電性の測定が困難である。このリーク電流は価数変化のない三価の非磁性元素で鉄を置換することで抑制可能であるが、非磁性元素での置換は逆に磁気相転移温度を大きく低下させてしまう問題がある。申請者は、ε-Fe2O3では磁性元素の占有サイトの違いにより磁気相互作用が大きく変化することに着目し、単結晶基板からのエピタキシャル歪によって薄膜の磁性元素のサイト占有率を変化させ、磁気特性の向上を確かめた。
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