研究課題/領域番号 |
21K14415
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川越 吉晃 東北大学, 工学研究科, 助教 (00884199)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 散逸粒子動力学法 / 分子動力学法 / 熱硬化性樹脂 |
研究実績の概要 |
本年度は量子化学計算(QM)・分子動力学法(MD)・散逸粒子動力学法(DPD)を連携した,エポキシ樹脂の反応硬化シミュレーションスキームを開発した.従来のQM/MD連携による反応硬化シミュレーションは数百コアの大規模計算機を用いて数十時間要していた.本研究では粗視化手法であるDPDをMDの代わりに用いることで,計算負荷を大幅に低減し,数コアの計算規模で数百秒で計算が完了する.これにより従来のMDによる反応硬化シミュレーションに比べて計算資源・計算時間ともに大幅なコストカットが可能となり,架橋構造の不均一性のようなメゾスケール構造特性を再現するのに必要な大規模系での反応硬化シミュレーションが可能となった. さらにDPDで得られた粗視化系をMDの全原子系へと復元するリバースマッピング手法も開発し,MDによる精緻な物性評価が可能となった.これによって比較的時間を要する反応計算をDPDで高速に行い,精緻な解析が必要な物性評価を全原子MDで行うという,効率的な解析スキームが完成し,多くの樹脂候補から最適樹脂をスクリーニングする場合に非常に有用なツールになり得る.計算から得られた密度・ヤング率・ポアソン比・線膨張係数・ガラス転移点等の熱機械物性およびXRDパターンなどの原子スケールの構造特性は実験結果とよく一致しており,ツールの妥当性が確認できた.これら成果はSoft Matterで公刊されており,カバー論文にも選ばれた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるメゾ構造を考慮した解析のためには大規模系での硬化反応シミュレーションが必須である.その基礎となる反応硬化DPDツールおよびリバースマッピングツールが完成しており,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
MDやDPDを用いた分子スケールでの解析とCFRPの変形や損傷を取り扱うFEMを用いたマクロ解析の連携を行なっていく. 具体的には分子スケール解析で得られた樹脂物性を繊維/樹脂を考慮したミクロFEMに導入し,複合材物性や成形過程における収縮特性を取得する.それら特性を積層板を考慮したマクロFEMに導入し,積層板の成形時変形を予測する.これによって成形時変形のマルチスケール解析手法の構築を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたPC購入を性能の観点から次年度に見送り,学会等もオンラインだったため,残額を次年度に繰り越した.これらはPC購入や投稿論文のオープンアクセス費用,学会参加費用,実験備品の準備費用にしようする計画である.
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