研究実績の概要 |
最終年度は、L12型(Al,Fe)3Tiセル構造体の力学特性評価を行った。 まず、気孔率を制御・増加させるための発熱助剤を添加せずにセル構造体を作製して、圧縮試験により評価を行った。Feを含まないD022型Al3Tiセル構造体(気孔率50%)は圧縮初期から脆性的に崩壊する傾向を示し、最大強度1 MPa程度の低い強度を示した。一方、L12型(Al,Fe)3Tiセル構造体(気孔率40%)は最大強度100 MPaを示し、Al3Tiセル構造体に比べて著しく高い強度を有していた。加えて、圧縮応力80 MPa付近で降伏挙動を示し、本セル構造体が一定の塑性変形能を示すことを明らかにした。しかしなが、圧縮公称ひずみが約2%に達したときに破壊した。 気孔率の低いL12型(Al,Fe)3Tiセル構造体において高い強度が確認されたため、発熱助剤を添加することで高気孔率化を行い、その力学特性を評価することとした。試料作製においては、セル構造体の前駆体であるプリカーサを型内に設置して発泡させることで、セル構造体の膨張が型によって拘束されるようにした。この方法により気孔形態が制御され、圧縮試験に供することが可能な試験片を得た。 気孔率が約80%となったセル構造体の圧縮試験を行ったところ、脆性的に破壊する挙動を示すとともに、圧縮強度は約1 MPaまで低下した。前年度までの研究によって、L12型(Al,Fe)3Tiセル構造体の母材には組成の不均一性が存在し、熱処理によって均質化できることが分かっていた。そこで、圧縮試験片を1200℃で熱処理することで、圧縮強度の向上を試みた。しかしながら、圧縮強度は大きくは向上せず、脆性的な挙動も変化しなかった。したがって、組成の不均一性はあまり圧縮特性に影響を与えておらず、気孔形態もしくは発熱助剤に由来して分散したセラミック粒子が脆性的な挙動に寄与していると考えられる。
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