研究課題/領域番号 |
21K14425
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
成田 麻未 名古屋工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (40886727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 爆発圧着 / アルミニウム合金 / マグネシウム合金 / 接合界面 / 中間層 / 接合強度 / 異種金属接合 |
研究実績の概要 |
車体重量を抜本的に軽量化するための新規材料として期待されるマグネシウム合金を,軽量材料として広く用いられているアルミニウム合金と組合せ,輸送機器の適材適所に取り入れようとする研究である。これには,信頼性の高い接合技術が必要であるが,両合金は難溶接材であり,これを克服するために「爆発圧着(爆着)法」を用いた。本手法により,接合時に界面に形成し接合強度に悪影響を及ぼす化合物層を,効果的に低減することが可能であることを見出した。 爆発圧着によってマグネシウム-アルミニウム爆着材の接合界面に形成する中間層内部では,組成分析により金属間化合物層であるγ相の形成が示唆されたが,中間層内部では濃度勾配が見られており,これは「拡散層」であると考えられた。また,マグネシウム合金側の接合界面近傍において,結晶粒の微細化が認められた。マグネシウム合金の高温変形挙動や再結晶挙動を参考にして推定した結果,断熱せん断変形に伴う再結晶によるものと考えられた。これらの成果を論文にまとめ,3件投稿し,海外雑誌(IMPACT)においても研究内容が紹介された。 更に本年度は,アルミニウム合金の組成を変えた爆着材を作製し,アルミニウム合金中のマグネシウム濃度を大きくすると,接合界面の中間層の厚みが大きくなることを明らかにした。実用上では,爆着時に試料内部に生じた残留応力を取り除くために熱処理が必要となるが,爆着材に対して熱処理を施すと,接合界面の中間層の厚みが大きくなり接合強度が低下する。一方,上記のマグネシウム濃度を大きくした爆着材では,中間層の厚みが熱処理材よりも大きいにも関わらず,接合強度の低下は小さかった。これは,中間層を構成する金属間化合物相の差であり,熱処理材では脆いβ相が接合界面に新たに形成することが接合強度低下の一因となることを明らかにした。この成果は,溶接学会誌特集号に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,1年目にマグネシウム合金の組成,2年目にアルミニウム合金の組成の影響について評価することとしており,この計画通り研究が進んでいる。また,残留応力評価について3年目に取組む予定であったが,適切な測定方法の検討のため,放射光X線回折や中性子回折による検討をすでに始めている。これらの検討を踏まえ,SPring8における放射光白色X線回折による測定を計画している。本手法はマイクロスケールの空間分解能を有し,複数の結晶相が混じり合う接合界面及び,接合界面近傍等の残留応力分布を評価することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
脆性材であるマグネシウム合金側において,接合後に高い引張残留応力があると,マグネシウム側で容易にき裂が発生・進展して破断が早期に起こる可能性がある。また,爆着材の実用化に向け,どこにどの程度の残留応力があると安全上問題があるか,明確にする必要がある。本研究では,中性子回折を用いた応力測定により,爆着材内部における残留応力状態を三次元的に解析したうえで,接合界面近傍については白色X線回折による測定により残留応力状態を明らかにする。更には,残留応力が生じる起源を明らかにするため,同種材(アルミニウム合金同士)を用いた爆着材を作製し,残留応力状態を評価する。また,焼鈍に伴う残留応力の変化と接合界面組織との関係についても明らかにし,残留応力を低減しつつ接合強度を保つことができる焼鈍条件についても検討する。
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