研究課題/領域番号 |
21K14427
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
郭 光植 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (90847170)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Ti-6Al-4V合金 / バスケットウィーブ / マイクロ引張試験 / 塑性異方性 / 結晶塑性解析 |
研究実績の概要 |
Ti-6Al-4V積層造形体バスケットウィーブ組織の微視組織要素における力学特性評価に先立ち、走査型電子顕微鏡(SEM)および電子線後方散乱回折(EBSD)により組織観察を行った。バスケットウィーブ組織は複雑な形態をしているが、α相に注目すると、1つの<a>方向を共有する3つのバリアントが隣接してクラスター領域(以後、クラスターと称する)を形成していることを確認できた。本年度は、バスケットウィーブ組織の基礎的なデータを取得するために、単一クラスターにおける力学特性ならびに変形挙動を調査した。 実験方法としては、試料を厚さ約20 μmまで薄片化を行い、EBSDにより結晶方位を同定し、試験片採取位置を選択した後、集束イオンビーム加工機および微細レーザ加工機を用いてマイクロメートルスケールの微視試験片を作製した。この際、試験片は3つのaバリアントにおける共通の<a>方向が荷重軸に対して0°、45°、90°となるようにした。 マイクロ引張試験で得られた応力-ひずみ応答では、0°試験片の降伏応力は961 MPaであり、45°と90°試験片の706 MPaと842 MPaよりも高い値を示した。一方、破断ひずみについては、45°試験片が52.7 %で0°と90°試験片の21.3 %と29.6 %に比べて約2倍の高延性を示した。いずれの試験片も最大シュミット因子をもつ柱面すべり系の活動により降伏した。そのときの分解せん断応力を求めると、柱面すべりが共通の<a>方向に活動した45°試験片は360 MPaと算出され、それ以外の<a>方向に活動した0°と90°試験片のそれぞれ434 MPaと382 MPaよりも低い値を示し、Ti-6Al-4V積層造形体バスケットウィーブ組織の単一クラスター領域において塑性異方性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた単一組織ユニットにおける力学特性の評価ならびに変形挙動の解析に至っているため、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はバスケットウィーブ組織の中でも組織学的かつ結晶学的に特徴づけられた単一クラスターに対してマイクロ引張試験を実施し、変形メカニズムについて検討した。次年度以降は、複数のクラスターに着目し、力学特性に及ぼすクラスター境界または旧β粒界などの結晶粒界の影響について調査し、実験データに基づく結晶塑性解析手法の構築ならびにそれを用いた多結晶材の特性予測に展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染状況により、ほとんどの学会または学術交流会が中止となったため、旅費として計上していた予算が使用できなかった。この予算は次年度に付帯設備の購入ならびに国際会議発表のための海外渡航費にあてる。
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