研究課題/領域番号 |
21K14429
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
植木 洸輔 近畿大学, 理工学部, 講師 (10845928)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生分解性金属材料 / メカニカルアロイング / 放電プラズマ焼結 / Fe基合金 / 腐食特性 / 機械的特性 |
研究実績の概要 |
メカニカルアロイングおよび放電プラズマ焼結によってFe-Mn-Mg合金の創製に成功した。作製したFe-Mn-Mg合金に対し、微細組織分析、硬さ試験、圧縮試験、浸漬試験、電気化学試験を行うことで、Fe, Mn, Mgの合金化プロセス、相変態挙動、Mg添加量が機械的特性および腐食特性に与える影響を明らかにした。Mg添加量の増加に伴い、合金化に必要なメカニカルアロイングの実施時間が増加することが明らかとなった。放電プラズマ焼結時にはbcc相からfcc相+hcp相への母相の相変態が発生した。Mg添加量のみならず、焼結体の緻密性も機械的特性および腐食特性に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。 これらの研究成果は、2021年9月14日に日本金属学会2021年秋期(第169回)講演大会にて「メカニカルアロイングと放電プラズマ焼結による生体用Fe-Mn-Mg合金の開発」という題目にてポスター発表を、2022年3月17日に日本金属学会2022年春期(第170回)講演大会にて「メカニカルアロイングおよび放電プラズマ焼結によって作製したFe-Mn-Mg合金の相変態挙動と機械的および腐食特性」という題目にて口頭発表を行った。さらに、現在投稿論文を執筆中であり、2022年5月頃に投稿予定である。また、2022年8月に開催される国際会議「Biomaterials International 2022]にて「EFFECT OF Mg ADDITON ON MECHANICAL AND CORROSIVE PROPERTIES OF BIODEGRADABLE Fe-Mn ALLOY FABRICATED BY MECHANICAL ALLOYING AND SPARK PLASMA SINTERING」という題目にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fe-21Mn-xMg(x = 0, 10, 20, 30, at.%)の組成にて配合した金属粉末に対し、最長60時間のメカニカルアロイングを施すことで、Fe-21MnおよびFe-21Mn-10Mgの合金化(bcc相単相化)に成功した。Fe-21Mn-20Mg, Fe-21Mn-30Mgは、MnもしくはMgの回折ピークが残留しており、合金化(単相化)は達成されなかった。 メカニカルアロイング後のFe-21MnおよびFe-21Mn-10Mg合金粉末から、放電プラズマ焼結によって合金の状態を保った状態の焼結体を得ることができた。すべての組成にて焼結によるbcc相からfcc相+hcp相への相変態が確認された。これにより、当初予定していた焼結体作製後の熱処理によるfcc単相化が不要となる可能性が高い。 焼結体の硬さは、Mg添加量の増加とともに低下する傾向を示したが、圧縮強度は気孔率が最も低いFe-21-10Mgで最も高い値を示したことから、メカニカルアロイング条件および焼結条件の検討が必要である。浸漬試験においてはFe-21MnよりもFe-21-10Mgのほうが腐食速度が遅いという結果になったが、電気化学試験から算出した腐食速度はFe-21MnよりもFe-21-10Mgのほうが速いことから、試料表面における腐食生成物形成挙動の制御が必要であると考えられる。 Fe-21Mn-xMg合金と同様のプロセスにてFe-21Mn-xZn (x =0, 10, 20, 30, at.%)合金を作製し、焼結体作製、組織分析、機械的特性および腐食特性評価を行った。Zn添加による焼結体の気孔率低下、圧縮強度上昇、腐食速度の低下が確認され、当初の予想とは異なる結果となったが、Fe-Mn合金へのZn添加は、焼結性向上および腐食速度の制御という観点から有用であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究成果から、Fe-Mn-Mgの焼結条件の最適化による気孔率の低下が必須であることが明らかとなった。焼結条件は、これまでは温度773 K、面圧120 MPaの一条件しか行っていないことから、令和4年度は温度を773, 823, 873 K, 面圧を120 MPa以上とした条件にて焼結を行う。面圧120 MPa以上にて焼結を行うために、超硬材料製の焼結型を作製する。さらに、これまで外注によって焼結体を作製していたが、学内にて焼結できる設備を導入し、効率よく研究を遂行できる環境を整備する。 本研究開始時にメカニカルアロイング設備の問題から、まずはCを含有しないFe-Mn-Mg/Zn三元系の合金化とその諸特性評価を行った。Fe-Mn-Mg3元系については、令和3年度の研究にてある程度の知見を得ることができたことから、Fe-Mn-Mg-C4の合金化と機械的特性および腐食特性の評価を行う。Fe-21Mn-xMg-3C(X =0, 10, 20, at.%)の組成にて配合した粉末をFe-Mn-xMg合金作製プロセスと同様のプロセスにて合金化を試みる。さらにC添加に伴う相変態挙動および析出挙動の変化を明らかにするため、必要に応じて作製した焼結体の熱処理を行う。 Fe-Mn二元系へのZn添加による腐食速度の増加が確認されなかったが、焼結性の向上および腐食速度の制御には有効な手法であると考えられるため、Fe-Mn-MgへのZn添加を試みる。Fe-21Mn-xMg-yZn (x =5, 10 y = 5, 10, at.%)の組成にて配合した粉末をFe-Mn-xMg合金作製プロセスと同様のプロセスにて合金化を試みる。 腐食特性の評価において、溶液に流れがある環境下での浸漬試験を実施し、腐食生成物が形成されにくい環境での腐食速度の算出を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の研究成果発表を行う上で、学会発表等による出張旅費を支出する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、すべてオンライン開催となったため、出張旅費が不要となった。 さらに、電気化学試験実施のために購入する予定であった試料ホルダを自作品で代用したため、試料ホルダ代が不要となった。 これらの結果生じた次年度使用額約15万円については、2022年度交付額と合わせて、放電プラズマ焼結機の設置費用および消耗品購入費用として使用予定である。
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