研究課題/領域番号 |
21K14431
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鴇田 駿 東北大学, 工学研究科, 助教 (60807668)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固相接合 / 溶接・接合 / ステンレス鋼 / アルミニウム合金 |
研究実績の概要 |
通電拡散接合は小変形かつ短時間で接合可能であることから小型部品などの異材接合法としての適用が期待されるが,実用化にむけて接合メカニズムの解明に基づく接合強度の向上やプロセスの安定化が求められる.そこで本研究課題では,通電拡散接合の接合メカニズムを解明し,安定して強固な接合を得られるような接合条件の指針を提案することを目的としている. 研究期間の1年目である2021年度は,接合性に及ぼす接合条件の影響を明らかにするため,接合電流,接合温度,接合圧力といった接合条件を系統的に変化させて304オーステナイト系ステンレス鋼の棒材同士を接合し,接合強度や接合部の微細組織を調査した. 放射温度計によって計測される接合部表面の温度がそれぞれ600~1000 ℃となるように接合したところ,接合温度の増加とともに断面における接合率が顕著に増加し,接合強度が大きく向上した.接合温度1000 ℃では接合部中心で被接合材が溶融していたことから,被接合材が固相のまま高い接合強度を示した接合温度を適正条件とした. 接合時間を0.2~100 sの範囲で変化させたところ,適正条件までは接合時間の増加とともに接合強度が増加し,それ以上の接合時間では接合強度はほとんど変化しなかった.接合圧力を20~50 MPaで変化させたところ,接合圧力が高いほど高い接合強度が得られた.いずれの接合圧力においても試験片の顕著な変形やバリの排出は観察されず,小変形で接合が達成されたことが示唆された.各条件で作製した接合部断面の接合率と接合強度の関係を調査したところ,接合率の増加に伴い接合強度が線形に増加する傾向が示唆された.以上の結果から,通電拡散接合により低変形・短時間で高強度な304オーステナイト系ステンレス鋼継手を作製するための接合条件最適化の指針が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に予定した内容について順調に遂行している. 上記の研究成果に加えて,2022年度の研究計画の予備的な検討として,熱処理や電気化学的な処理により表面に厚い酸化膜を形成した試験片における接合条件を検討し,得られた接合部の断面組織観察に着手している.また,主に2023年度に取り組む予定の異材接合の予備的検討として,ニッケルやアルミニウム合金との異材接合を行った.接合強度の改善にはさらなる検討が必要であるものの,通電拡散接合により鋼/ニッケルや,鋼/アルミニウム合金の接合が可能であることが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,接合メカニズムの解明に向けた研究に注力する予定である.2021年度に得られた適正な接合条件を参考に接合条件を系統的に変化させ,得られた接合部の微細組織をSEM/EBSDやTEMにより観察する.また,あえて厚い酸化膜を形成した試験片において接合を行い,その微細組織を観察・比較することで,「通電拡散接合の小変形かつ短時間のプロセス中にどのように酸化膜が除去され,接合が達成されているのか」について詳細に検討を進める. さらに2023年度には,それまでに得られた知見を異材接合へと展開し,鉄鋼材料とアルミニウム合金の異材接合における接合条件の最適化や接合メカニズムの調査を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた情報収集のための学会参加がオンラインとなり,旅費として計上した費用が次年度へと繰り越された.また,試験材料費が想定より安価であったことや,試験片加工に研究機関の内部の製作所を積極的に活用したことから,試験片準備に関わる費用が削減され,次年度へと繰り越されている. 一方で,2022年度以降に予定している詳細な微細組織観察に必要な消耗品費や共通設備の使用料が当初の想定より高価になることが見込まれるため,繰り越された差額はこれらの費用に充てることを計画している.
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