2023年度は、通電拡散接合をステンレス鋼とアルミニウム合金の異材接合へと展開するための研究を行った。接合温度、接合圧力、接合時間を系統的に変化させて接合した304ステンレス鋼と5052アルミニウム合金の引張強度を測定した。接合温度を増加させると強度が増加する傾向がみられたが、接合温度が450℃から500℃へ増加すると強度は大きく減少した。走査電子顕微鏡(SEM)での観察の結果、接合温度500℃では接合界面で厚い反応層が形成された。接合圧力は強度に大きな変化を及ぼさなかったが、接合圧力が28MPa以上となると接合界面近傍での変形が顕著になり、強度が低下した。これは、過剰な接合圧力の下で加熱されたアルミニウム合金がバリとして排出されてしまい、接合界面中心の温度が下がったためと推察された。接合時間を変化させた場合、接合時間30 sまでは接合時間の増加とともに接合部の強度が増加したが、それ以上の接合時間では強度に大きな変化は見られなかった。SEM観察の結果、接合強度の変化は接合界面での反応層の形成と関係していること、また反応層の厚さは円柱状の試験片の外周部で大きくなることが示唆された。そこで反応層厚さと接合部の強度の関係をプロットしたところ、反応層の最大厚さが2.5μm程度に達するまでは厚さの増加に伴い強度が上昇し、4μm程度まで成長した継手では強度が大きく低下した。 これまでの研究結果を総括し、通電拡散接合における接合メカニズムを検討した。ステンレス鋼同士の接合では局所的な塑性変形や安定な酸化物への変化により自然酸化膜が分断され、接合が達成された。ステンレス鋼とアルミニウム合金の接合において、界面反応は中心部より外周部の方が早く進行した。これは、圧力分布の不均一さや治具と試験片の間の接触抵抗で生じるジュール熱により、外周部での界面温度が中心部に比べて高かったためと推察された。
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