研究実績の概要 |
多結晶金属材料の粒界に溶質元素が偏析すると、粒界強度や腐食挙動など材料の諸性質が大きく変化するため、粒界偏析の制御は材質の向上に極めて重要である。本研究では、最も重要な構造材料である鉄合金におけるCの粒界偏析に着目し、粒界性格の影響を考慮した上でCの偏析挙動を系統的に調査する。本年度には、昨年度に作製したFe-40massppmC二元合金を600℃, 24h長時間焼鈍して、Cを粒界に平衡偏析させた後、EBSDとFIBを用いて粒界方位差と面測定に基づき粒界性格を評価したうえ、異なる粒界におけるC偏析量を三次元アトムプローブにより測定した。Σ3(111)などの対応粒界よりも、ランダム粒界におけるC偏析量が高いことを確認した。また、分子静力学法によりΣ3(111)などの対応粒界モデルを作製し、パーシステントホモロジー法を用いて粒界における空隙多面体ユニットを抽出し、第一原理計算により各種多面体におけるCの偏析エネルギーを評価した。粒界空隙ユニットのトポロジー情報は、そのサイトにおけるCの粒界偏析エネルギーと良い相関があることが明らかとなった。さらに、隣接した粒界空隙ユニットに複数のC原子を入れて第一原理計算を行うことにより、C-C間にある反発的相互作用が働くことによりCの偏析エネルギーが低下することが見られた。昨年度までの実験調査で得られたC-Cの反発的相互作用の結果とよく一致する結果であった。
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