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2021 年度 実施状況報告書

摩擦攪拌ツール元素の強制固溶に基づく表層組織/残留応力の同時制御

研究課題

研究課題/領域番号 21K14438
研究機関大阪大学

研究代表者

山本 啓  大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (00842577)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード摩擦攪拌プロセス / ツール摩耗 / 表面合金化 / マルテンサイト変態 / 残留応力 / 超硬合金 / 固溶強化 / メカニカルアロイング
研究実績の概要

初年度の研究では,WC-Ni系超硬合金ツールを用いた摩擦攪拌プロセス(FSP)によって生じる残留応力に及ぼす施工条件の影響を調査するため,低炭素鋼板SM490Aに対し,ツール移動速度一定で種々の回転速度におけるFSPを施工し,施工面のX線残留応力測定を行った.ツール回転速度の増加に伴って,残留応力はおおよそ引張,圧縮,引張の順に推移しており,圧縮残留応力を発生させるための適正な施工条件範囲が存在することが明らかとなった.しかし,施工面表層へのW,C,Ni等のツール構成元素供給量はツール回転速度(ツール摩耗量)の増加とともに増大しており,その元素濃度分布と残留応力分布の対応からは,両者における直接的な関係性を説明するに至らなかった.同一の表層領域に対し,ビッカース硬さ試験を実施した結果,元素供給量の増大とともに硬さの増加は認められるが,ある一定の元素供給量以上ではその硬さ増加量が小さくなる傾向を示した.元素供給量の大きな領域では,FSP中の相変態によって生じたマルテンサイト自体の固溶強化量が大きくなる一方で,残留オーステナイト生成に伴うマルテンサイト体積率の減少も促進されると考えられ,それらのバランスによって硬さ増加の停滞が起こったと考えられる.したがって,FSP施工面における残留応力発生挙動の解明には,残留オーステナイトの存在も視野に入れて今後検討していく必要があることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通り,初年度は供試材及びFSP施工条件の選定を行うとともに,FSP施工条件変化による残留応力への影響についてその傾向を把握することができ,圧縮残留応力発生機構の解明(次年度以降)に向けた準備を順調に進められた.

今後の研究の推進方策

低炭素鋼の残留応力には,ツール通過後の冷却過程において生じるマルテンサイト変態の関与が考えられることから,次年度以降では,FSP施工面における残留応力分布と組織形成の関係に着目して,圧縮残留応力発生機構を明らかにする.それに際し,より詳細な組織観察,元素分析,結晶構造解析を実施し,各条件ならびに各領域におけるマルテンサイトの変態量や変態開始温度などの因子の定量化を試みる予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 摩擦攪拌プロセス施工鋼表層の残留応力とWCツール構成元素固溶量との関係2021

    • 著者名/発表者名
      山元優士, 山本 啓, 伊藤和博, 三上欣希
    • 学会等名
      一般社団法人 溶接学会 2021年度秋季全国大会

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公開日: 2022-12-28  

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