研究課題/領域番号 |
21K14438
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 啓 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (00842577)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 摩擦攪拌プロセス / ツール摩耗 / 表面合金化 / マルテンサイト変態 / 残留応力 / 超硬合金 / 固溶強化 / メカニカルアロイング |
研究実績の概要 |
昨年度の研究では,ツール回転速度の増加に伴って,残留応力が引張,圧縮,引張の順に推移しており,圧縮残留応力を発生させるための適正条件範囲が存在することが明らかとなった.今年度はその理由を明らかにするために,残留オーステナイトの存在に着目して実験を行った.具体的には,残留応力測定箇所に対し,XRDを用いて残留オーステナイト体積率を求め,またその断面最表層部をEPMAにより元素分析を行った.EPMAにより求めた元素量からマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を計算し,残留応力との関係で整理したところ,残留応力はMs点が150℃付近を境界として圧縮化しており,その前後では引張にシフトしていることが明らかとなった.さらに,XRDにより求めた残留オーステナイト体積率は,Ms点が150℃以上の範囲においてMs点の低下とともに増大していることがわかった.Ms点が低下し,室温付近にてマルテンサイト変態が完了する場合に膨張量が最大化され,残留応力は引張から圧縮へと遷移するが,Ms点が150℃以下の範囲では,室温でのマルテンサイト変態が未完了(残留オーステナイト体積率増加)となったことでそれに伴う膨張量が不十分となり,引張残留応力が生じるものと考察した.引張残留応力が導入されるツール元素固溶量が過剰の施工面表層では,多量の残留オーステナイトが存在しており,これらが機械的性質に及ぼす影響を明らかにする必要が出てきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度時点で課題となった,圧縮残留応力発生機構について明らかにすることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究から,ツール元素固溶量が過剰となった施工面表層では,施工時の冷却過程で変態できなかった多量の残留オーステナイトが存在していることが明らかとなったが,これらが機械的性質に及ぼす影響を明らかにする必要がある.そこで,次年度はその残留オーステナイトが,引張応力負荷時や疲労き裂近傍の塑性域において加工誘起マルテンサイト変態を生じるなど,有効に作用するか調査する方針である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも物品費が低い金額で収まったため.
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