WCツールの摩耗を伴った摩擦攪拌プロセス(FSP)を低炭素鋼板に施工し,その攪拌部表面における残留応力生成機構を調査した.ツール構成元素が固溶した攪拌部表層では,マルテンサイト(α')主体の組織が観察された.攪拌部表面に生成される残留応力はツール構成元素の固溶量とそれに起因するα'変態開始温度(Ms点)に依存していた.Ms点の低下とともに室温付近でα'変態による膨張が生じるため,残留応力は引張から圧縮へと遷移し,約150℃のMs点において最大の圧縮残留応力を示した.Ms点が150℃以下になると,室温においてα'変態が未完了となることで膨張量が不足し,再び引張残留応力を生じることが示唆された.
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