研究課題/領域番号 |
21K14441
|
研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
真中 俊明 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 講師 (60805068)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | アルミニウム合金 / 表面組織制御 / 水素脆化 |
研究実績の概要 |
Al-Zn-Mg系合金は高強度を示すが、ピーク時効の状態では環境から侵入した水素による機械的特性の劣化、いわゆる水素脆化に対する感受性が高いことが問題となっている。Al-Zn-Mg系の水素脆化を抑制するためには、粒界上析出物を粗大かつ低密度に分布させることが有効であることが認識されており、過時効処理を施すことで水素脆化を防止している。しかしながら、この方法では強度に寄与する粒内の微細析出物も粗大化し、強度が低下してしまい、本合金系の持つ高強度という特性を活かしきれていない。Al-Zn-Mg系合金の環境水素脆化は、合金表面で水蒸気と新生面との反応で生じた水素が合金中に侵入することで引き起こされると考えられている。したがって、合金表面に耐水素脆化特性を付与しつつ、内部には高強度を示す組織を形成すれば、強度を犠牲にすることなく水素脆化を防止できるのではないかと考え、表面強加工とその後の時効処理による表面への耐水素脆化特性付与の可能性を検討することとした。 2021年度は表面強加工を行うための実験装置のセットアップと実験パラメータの検討を行った。実験装置は、ロードセル、工具鋼圧子、スライダ、ステッピングモータから構成されており、任意の荷重で圧子を試料に押し当て、それからスライダ部を移動させることで、試料表面に加工を行うことができる。荷重とスライダ移動速度を実験パラメータとして、Al-4.5Zn-1.5Mg合金に対して、表面加工を行った。加工後は加工断面に対して、ミクロ組織観察とマイクロビッカース硬さ試験を行い、表面強加工による組織形成を評価した。その結果として、一部の加工条件で表面から約50μmの深さで結晶粒の微細化(加工方向への流動)と硬さの上昇が認められ、本研究でセットアップした装置で表面組織制御が行えることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、表面強加工を行うための実験装置のセットアップと実験パラメータの検討を行い、Al-4.5Zn-1.5Mg合金溶体化材の表面組織制御に取り組んだ。実験パラメータを適切に制御することで、組織を変化させることが可能であることがわかった。当初予定していた計画に沿って、実験を進められているため、おおむね順調に進展しているものと自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は表面加工のパラメータの最適化を行い、微細粒領域の厚さを制御するとともに、引張試験による機械的特性の評価や加工後に時効処理した試料の評価を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、学会発表で出張を計画していたが、新型コロナの影響で見送ることとした。その分は、他の物品購入費として一部使用した。残額については、2022年度に消耗品の購入費に充てる予定である。
|