研究課題/領域番号 |
21K14447
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡邉 学 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50880283)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HAXPES |
研究実績の概要 |
本研究では、規則―不規則変態が生じる合金系の溶融金属の熱物性、熱力学関数の相関性について、電子状態の観点から明らかにすることが目的である。 我々の研究グループでは混合のエンタルピーに変わり過剰ギブズエネルギーを用いた相関性を用いた新たな金属溶液論を提唱した。しかし、これらの合金系では、遷移金属内の3d電子数が増加するとともに、過剰体積は増加し、過剰ギブズエネルギーが減少するという従来では考えられない相関性が生じている。そこで本研究では、溶融金属の電子状態から、この相関性の原因を明らかにする。本年は、高輝度放射光施設SPring-8にて、電子衝突法により金属試料を直接加熱を行いながらin-situでの光電子分光を行うことができる手法、”高温HAXPES”の確立に成功した。本手法により、Fe-Pd合金および純Pdを1000 ℃まで加熱することができ、さらに電子状態の測定も問題なく行うことができた。具体的には、Fe0.25Pd0.75合金およびPdの測定を行い、磁性の変化に伴う電子状態変化を測定することができた。このほか、試料を高温状態から急冷し不規則相試料を作成し、規則相、不規則相および磁性の変化に伴う、電子状態の変化についてHAXPES測定を行い、これについては、オープンアクセスにて論文(Acta Materialia, 267(2024)119718)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高温HAXPESの手法確立に成功したことにより、金属材料であれば1000℃程度まで加熱しながらin-situでの光電子分光が可能となった。本年では、Fe0.25Pd0.75合金およびPdの測定を行い、磁性の変化に伴う電子状態変化を測定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電子衝突法による加熱の入熱量を増やすことで、さらなる高温化を目指す。また、固体だけでなく、最終的には液体状態まで光電子分光測定を可能としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はSPring-8での実験が主となる。SPring-8で行うことができた実験時間に限りが生じたため、使用額も大きくならずに残ったためである。今後は、融体の熱物性測定精度向上のために、ガスジェット浮遊炉を作成し、ガスジェット浮遊とHAXPESを組み合わせた測定法を確立する。
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